先日も人工甘味料の製法の発明対価として、1億8,000万円の支払いを命じる判決がありましたね(2月24日)。発明の対価がますます話題になる今日この頃。
さて、前回の続きです。社内のコンプライアンス用プログラムを作ったべっきぃは「相当の対価」をもらえるのでしょうか?
ふーん発明か…それなら私だって、この前、社内コンプライアンス用のプログラムを作ったし、もしかして「相当の対価」をもらえるってことですか?!
プログラム?
仕事中に作ったとはいえ、作成者はわ・た・し。権利は「個人」にあるわけだから、まずは、私が会社にその権利を譲り渡して、その分の「対価」をもらうんですよね。よし、さっそく算定してもらわなきゃ!いくらになるかな~♪
う~ん、今話題の人工甘味料の発明対価で1億8000万円でしょ。べっきぃの場合は、見当がつかないけど1万円くらい?
そんな安くありません!(5000万円くらいかな?!ひゃーー家買おうっと。夢は広がる~!)
甘いわね。ずばり0円よ。
へ??な…何でっ???!!!
つまり、べっきぃの作った社内のプログラムは、「発明物」というより、「著作物」だからよ。
ますますわかりません!
まず「知的財産権」っていうのは、大きく分けて、「産業財産権」と「著作権」があるのは知っているわね。「産業財産権」は、機械や化学物質などの高度な発明に関わる「特許権」、考案に関わる「実用新案権」、あとはデザインなどの「意匠権」、ブランド、ロゴマークなどの「商標権」の4つ。この4つは、特許庁に対して、出願・審査・登録されて認められる権利なの。一方、「著作権」は音楽、美術、学芸やコンピュータソフトの創作物に関わる権利。ちなみにこれは別に登録しなくても権利として認められるわ。今回べっきぃの作った社内用のプログラムは「発明」というには単純なプログラムだし、むしろ「著作権」としての保護が受けられる「著作物」と考えられるわ。
著作物…。Wait!それなら「著作料」がもらえるんじゃないですか?
それが、残念ながら無理なのよ。著作権法には「法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。」(15条2項)とあるの。つまり、特に就業規則や契約で決めていない限りは、会社の指示のもとで社員が作成したプログラムの著作権は会社にある、ということよ。
「発意」って…??別に、具体的に会社からあのプログラムを作って欲しいって言われたわけじゃなくて、業務をやっている中で、自分でこんなプログラムがあったらいいなと思って作ったんですけど…。
会社が、具体的に「こんなプログラムを作って欲しい」という指示をしなくても、「プログラムを作成するに至る業務を担当させる」だけでも、会社には「発意がある」と考えられているの。よって、べっきぃのプログラムも会社の発意に基づいて作られたと言えるのよ。よって、べっきぃの場合、ニュースで騒がれているような特許訴訟のケースとは別の話になってくるわ。
「発明」は個人のものなのに、「著作」は会社のものなんですね。そんなのおかしいですよ~(泣)
そうね。知的財産権の問題は、本当に難しいわね。たとえば、社員が画期的な営業手法やマーケティングのノウハウなどを開発した場合、その知的財産の「対価」はどうなるか、なんて議論も出てきているわ。
やっぱり、「筋肉質自動判別機」で自ら特許をとるしかないってことですかねぇ!
あう……。
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