第一法規株式会社|教育研修一覧

2004/10/13号

~ちょっとだからいいやと思っているその不正…立派な犯罪です~の巻

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突然ですが、皆さんの会社は労働時間の把握を何でされてますか?コンプラ推進室は勤務管理表で管理しているようです。今日の話題は、タイムカードの不正打刻、時間外賃金の不正受給のようです。ちょっとだから…とか、バレないだろう…という軽い気持ちは、一生を棒にふることになりますよ~。

おはよう、べっきぃ。さっき筋野君のところに用事があって行ったんだけど、来てないのよ。風邪かなぁ…。

むむむ…昨日飲み過ぎたんですね。単なる遅刻ですよー。

そうかなぁ…にしても、誰とそんなに飲んだんだろう…。

-------------------------1時間後-------------------------

おい、つきいるか~!?「出社したらすぐにわたしのところに来て★」ってメモが置いてあったからさー。

あ、筋野くん、大丈夫?はい、これ。頼まれてた書類。

おっ!サンキュー。いやぁ、飲みすぎてさー。ガハハ。遅刻しちゃったよー。

ほらね、つき先輩。ところで、チェーック!!勤務管理表には遅刻を記録しましたか?コンプラ推進室としては見逃せないですよ。

そりゃ、もちろん!俺だって伊達に遅刻してないってば!ガハハ。

(威張れることかよっ!)

勤務管理表っていえばさ、会社によって労働時間の把握方法が違うみたいだよな…。俺の友達の勤務時間はさ、タイムカードで管理されてるらしいんだけど、遅刻しそうな時は、同僚に打刻してもらってるんだってー。いいよなー、それ。

何言ってるの?!いいわけないでしょ!!(怒)

あ”ゆき先輩…ご立腹ですよね…。すいません…、よくないです。はい…。

そりゃそうですよ、コンプラ推進室に来て、今の発言はナシですよ~筋野さん!

私も似たようなことを聞いたことがありますよ。残業したって申請して、実は会社で誰も残っていないのをいいことにパソコンゲームして遊んでたっていう人の話。

え~!!それって詐欺みたい!

そうね、この行為は民法上も、刑法上も違法な行為ね。民法上では、社員は会社に対して、不正に受け取った賃金を返還しなきゃいけないわ。当然よね。刑法上は、べっきぃの言うとおり「詐欺罪」に該当するの。会社は社員を捜査機関に対して刑事告訴することができるわ。でも、これは、会社内部の問題ではなくなるから、慎重にする必要があるわね。労使関係の問題としては、会社として懲戒処分をすることも可能なのよ。

みなさ~ん!厚生労働省東京労働局が東京の本社1,917社に「労働時間の把握は何でおこなっているか?」っていう調査をした結果を見つけました~!(労働時間・休日・休暇制度をめぐる状況 東京労働局労働基準部労働時間課 7.労働時間の把握は何によっているか)
「タイムカード・IDカードによる労働時間把握」は40.4%(773社)
「出勤簿」は56.0%(1,074社)
「時間外届出書」による残業管理は30.1%(577社)次いで
「IDカード等」12.6%(241社)
「LAN、Webを含めたコンピュータ勤怠管理システムへの各自入力」は52.2%(72社)
「その他」7.2%(138社)
「労働時間の記録は行っていない」は0.8%(16社)となっていますよ。

労働時間の把握方法は、タイムカードと出勤簿がまだまだ多いのね。

はい。ちなみに「タイムカード」を採用する比率が高い業種は製造業でした。

「タイムカード」はガシャンってやるだけで簡単だもんね。

それに、誰がガシャンってやるかなんてわからないっちゃぁ、わからないよなぁ。

こら~!!こういう社員がいるから困るんですよ!

会社と社員の間には労働契約が締結されていて、会社は社員に対して賃金を払う義務があるわよね。で、社員は会社に対して労働契約の内容にしたがって労働する義務がある。これはわかるわよね?!

10年以上前の入社式で言われたような…。

そもそも、「タイムカード」は会社への出退時刻を明らかにして、給与の算定の基礎のために設置されているんだもんね。ってことは…遅刻、早退をしてその時間働いていないとか、ゲームをしていて働いていないのにも関わらず、給料をもらうっていうことは不正としか言えない…。

真面目に業務をしている他の社員はたまんないですよね!これは、社内の規律・秩序も乱れますよ。士気が下がるよなぁ…。

そのとおりよ、べっきぃ。お金の問題だけじゃなくて、社内の士気が下がるのは会社にとって損害が大きいわよね。

じゃぁ、あらかじめ会社としてはどういう対策をしておかなきゃいけないですかね?

タイムカードを日頃から誰もが見える位置に設置したり、「不正打刻は厳しいおとがめがある」ということをきちんと社員に伝えておくといった配慮が必要よね。

懲戒処分には、懲戒解雇、出勤停止、減給、譴責(けんせき)・戒告があるんですよね!

処分に一番近いから詳しいんだ~。ぷぷぷ。

(聞こえてない)

一番厳しい処分はご存知だと思うけど、懲戒解雇よね。これは、解雇予告も予告手当ての支払もなく、即時に行なわれるの。退職金も全部、または一部が支給されないのよ。

でも懲戒解雇ってそう簡単にできないですよね?!

そうね、どの程度の懲戒処分を科せるのかは、不正受給した賃金の額や不正行為を行なっていた期間、不正行為の態様、社員に与えた影響などを総合的に考慮して、慎重に決定しなきゃいけないわ。

あ、今までにタイムカードを打刻したけれど、勤務してなくて組合の会議に出席していたケースで懲戒解雇が認められてます!

懲戒解雇が認められた例があったとはいっても、不正打刻をしたからって、すべて懲戒解雇にできるって考えるのはちょっと早計ね。べっきぃのあげたケースは、不正行為の絶滅を期して、総務部長名で、タイムレコーダーを不正打刻した者は解雇する旨告示し、その旨を全社員に周知徹底していた上で、起こってしまった不正行為なの。でも、この行為は職場規律や秩序までも乱すものだから、懲戒処分の対象になることは間違いなさそう。

会社としては、あらかじめ厳しい姿勢で臨んでおくことが大切なんですね。

どっちにしてもさ、不正はしちゃぁいかんのだよ!ガハハ

で、誰と飲んだの?

あ、べっきぃだよ!たまにはどうかなぁと思ってさ、誘ってみたんだよ。な!

……あう…ゆ、ゆき先輩も一緒でしたよ!

そうよー。つきちゃんも来ればよかったのに!

ガクッ

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