会社の社会的存在の意味が従来になくクローズアップされるようになった今日このごろ。そんな中で「監査役」もその重要性が注目されています。さてさて、「監査役」って、どんな役割なの?
いままで取引のなかった会社と新たに取引を開始するときって、まずなにを調査したりする必要があるんでしょうか?
え?どうしたの?急に。
実は、企画部門から新しい提案があがってきて、新規の会社との大規模な取引が含まれる話しなんです。もちろん、いろいろ調べた結果の提案だと思うのですが、販売促進部としても、販売計画をたてるにあたって、相手先の経営状態が気になるので、ちょっと調査してみたいな、なんて・・・。
ああ、その件なら会社のほうに相手から決算書類の提出があったわ。
あ、ゆき先輩。そうなんですか?!
そう。この決算書類に大変な誤りがないかぎりは、この企画は大丈夫よ。
むむ。ゆき先輩!では、もしも仮にその決算書類に重大な誤りがあったら?どうなるの?
誰の責任になるんでしょう?決算書類を見てOKした会社に?いや、それとももしかして、企画提案者?あ、まさか、販売計画立案部署の私にも責任が!?
これこれ、あせらないあせらない。もしも、決算書類に誤りがあったら、という仮定で話しをしましょう。この書類を信じて取引を開始して、そのことによって当社が膨大な貸倒れを出したとして、まず、この決算書類は、この相手会社の監査役が会計監査をしているはずね。
あ、そうだ。そうそう。監査役っていうのがあるんですよね。
そうね。この監査役が監査にあたって、悪意または重過失があった場合は当社としては、この監査役に対して損害賠償の請求をすることができるわ。
でも、悪意とか重過失って、どうやったらわかるんでしょうか?
決算書類の内容がその会社の実態とかけ離れたものなのに、それを承知で監査を怠った、または少し注意をはらえば発見できたものをその義務を怠った、ということね。
実際に損害賠償を問われた裁判なんてあるんですか?
裁判で監査役の悪意や重過失が問題になったのは、そのほとんどが資本金1億円以下の株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律上の小会社に関するものね。こうした会社の場合は、監査は会計監査に限られていて、業務監査を行う権限が与えられていないのね。だから、監査役が会計監査を事実上放棄するとか、著しく怠った場合に、悪意や重過失が認められる傾向があるわ。
過失を認められなかった事案て、あるんですか?
あるある。監査役の会計監査に明らかに任務違背が認められたものの、監査役就任が親戚関係にどうしてもと請われてしたもので、在任期間も短期で、他の取締役と比べてもかなり若輩で、会社の粉飾決算についても知らされていなかった、という事案があるわ。
なるほどー。しかし、監査役って、重責ですね。
そうよ。監査役制度自体は、それこそ戦前からあったものだけれど、一旦は法改正で権限が縮小されたのよ。それが、1974年からはじまった一連の改正で、監査役の権限も独立性も強化されて今のようになったのよ。監査役制度といえば、2002年5月の商法改正で「委員会等設置会社」という制度が施行されたけれど、これは経営の透明性をより高める制度なの。それと今度の国会で提出される新しい会社法では、機関の設計については、かなり多様化されたわ。これについては、また別の機会に説明するわね。
はーい!
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