第一法規株式会社|教育研修一覧

2006/03/01号

~卸価格ってヒミツなの??~の巻

line

普段の生活でも、人から聞いたことをなにげなくしゃべってしまって、あとからこっぴどく怒られる、なんてこと誰でも1度はあるのではないでしょうか。「それ、ヒミツだったの?」なんて慌てても後の祭り。信頼関係で成立っているのは、人間同士だけでなく、企業と企業も同じです。

「わあ~申し訳ありませんでした!!ヒミツだなんて思わなくて…。改めて対応策を検討してご連絡します!」(ガチャッ)

何かあったんですか?!

昨日から全国展開しているセールで、安さを売りにしようと思って、「大出血の原価セール!メーカー卸価格でご提供!!」とうたって、卸価格をでかでかと表示したチラシを配布したんだ。そしたら、このチラシを見た仕入先から、お怒りのクレームが入っちゃったんだよ~!!

あれま!どういうことですか?

卸価格は他の会社にはヒミツなんだから、今回の件は「不正競争防止法の不正競争行為に該当する」なんていわれてさ。至急チラシを回収するように言ってきてるんだ。え~、まず各店舗に連絡して…(あわあわ)

そんなにあわててどうしたの?

あっ、ゆき先輩!聞いてくださ~い(泣)仕入先いわく、卸価格っていうのは、他の競業メーカーに知られたら競争上不利な立場におちいるのは明らかなんだから、他にもらさないことを前提に取引しているんだから、これは営業秘密なんだって。

契約上で、卸価格をもらさない、って決めてあったんですか?

いや、特に契約事項として書面には明記してないんだけど、当然守るべき義務としてお互い了解していたものだと思っていたみたい。とにかく、今回の件は不正競争防止法に違反しているって言われちゃってさ。ふえ~、チラシ30万枚も刷っちゃったよお~!!!

まあ、落ち着いて。結論から言うと、卸価格を開示することは、不正競争防止法の不正競争行為には該当しないのよ。

えっ!?

そもそも不正競争防止法ってどんな法律でしたっけ?

不正競争防止法っていうのは、著名ブランドの便乗商法、偽物商法、営業秘密の不正利用、外国公務員への賄賂など、国際条約で加盟各国と約束したアンフェアな事業活動の取り締まりを日本国内で実施するための法律よ。付加価値の高い製品やサービスを提供するためには、他社との差別化が必要よね。そのためには自社のみがもつユニークな技術、ノウハウ、情報などの営業秘密が鍵なのだけど、その保護を強化するために、平成15年に不正競争防止法が改正され、不正競争行為に対して刑事罰が導入されたの。

この法律がいっている営業秘密って、どんなものですか?

「秘密として管理されている精算方法、販売方法、その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」と定められているわ。秘密として管理されていること(秘密管理性)、 事業活動に有用な情報であること(有用性)、公然と知られていないこと(非公知性) が満たされて営業秘密とされるの。例えば、パスワードがかかっているファイルにきちんと管理された顧客名簿などがこれにあたるわね。「営業秘密を保有する事業者からその営業秘密を示された場合において、不正の競業その他の不正の利益を得る目的で、またはその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、または開示する」ことを不正競争行為、というのよ。

なるほど~。卸価格をチラシに載せることは、「不正競争行為」にならないんですか?

卸価格(仕入価格)は、売主と買主との交渉を通じて形成されるものであるのよね。よって、仕入先が秘密に管理していたものを示されたものでもないし、不正な手段によって取得したものでないと考えられるの。従って、卸価格を開示することは、不正競争防止法上の不正競争行為には該当しない、って判例が出ているのよ。

あ~よかった~。ほっとした~!!

こらっ!ほっとするのは早いわよっ!仮に法律違反でないとしても、取引先とは信頼関係の下で取引が行なわれているわけでしょう。お互いの信頼関係を損なう行為は慎むべきよ。取引先に係わる情報を開示する際には、事前に許可を受けておくのが懸命ね。ま、広く一般に知れ渡っていることであれば必要ないとは思うけど…。

信頼でつながっているのは、人間同士だけでなく、企業と企業も同じ、ってわけですかね(しみじみ)

<< 一覧へ戻る

line