第一法規株式会社|教育研修一覧

2006/05/30号

~残業代の不当受給~の巻

line

勤務時間の管理、サービス残業問題、取り巻く労働環境改善の動きは日々広がっているようです。ところが、それを利用し着服するような横領問題も変わらず存在します。安易に考えているととんでもないことに…。

まだ仕事おわんねーの?早く飲みいこーぜ。

誰の事務処理をしてると思ってるんですか、誰の。もうちょっとなんですから、大人しく待ってて下さい!

しょーがない。んじゃ、本日の勤務時間の報告でもしとくか。えーとあと30分後くらいだな。

って、筋野さんが今やってたのはネットサーフィンじゃないですか。

いいんですかー、そんな報告して。ゆきさんに言いつけちゃいますよ。

違反行為を目の当たりにしてしまうなんて…。

3人がかりで大げさな。これでも資料収集してんだぞって。

で、ほんとにそのまま報告するつもりなの?

あ、ゆき先輩…。

その行為が民法上も刑法上も違法だって事を認識して、覚悟をもって行おうとしてるのかしら?

いえ、これはけっして遊んでいるわけではなく…。

言い訳無用。筋野君、雇用契約って知ってるわよね。労働の対価として賃金をもらっている以上、偽りの報告をすることは詐欺罪として処分を受けることもありえるのよ。

会社として、刑事告訴も可能となるんですよね。

そう。ただ、告訴については慎重な配慮が必要になってくるわね。加えて、こういった行為は社内の規律・秩序を乱す行為として懲戒処分の対象にもなりえるのよ。

ちょっと前には大阪市のカラ残業が問題になりましたよね。

そうね。あの事件では、対象となった2001年度以降、計4万7,000時間のカラ残業が確認されたのよね。ただ、証拠となるはずの入退庁簿の保存期限が1年、出勤簿が3年という文書管理に阻まれてそれ以上の追及が難しくなってしまったけど。

それでも、6,000人を超える残業大量処分につながったんですよね。地方公務員法上の処分については、その対象人数の少なさに「甘すぎる」等様々な批判もありましたが。

数年前の「ヤミ手当」での反省が生きていないとされても仕方無いわね。さて、今回の筋野君については…。

あの、もう十分反省し…。

民法上では、不正受給した賃金の返還をすべき義務を負うことになるんですよね。

そのとおり。不正に受給した金額に民法所定の5パーセントの遅延損害金を付して返還すべき法的義務を負うことになるの。さすが、勉強してるわね。刑法については?

そこは私が。詐欺行為については、「人を欺いて財物を交付させた者は10年以下の懲役に処する」とされています。この場合、筋野さんが会社を欺いて、金銭という財物を交付させたことになりますので、この行為は詐欺を構成し、処罰の対象となってしまうんです。

そして懲戒処分についてはどの程度の期間か、いくら不正受給したのか等を総合的に考慮して決定されることになるのよ。これでもまだ報告する気が残ってる?

大変失礼いたしました(泣)

<< 一覧へ戻る

line