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2006/07/26号

~秘密保持契約って何?~の巻

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企業に対する情報開示の要請が、日々高まっている今日このごろ。しかし他方では、増大する情報漏洩リスクに対して、いかに情報を適切に管理すべきか悩ましいという、現場の第一線からの声も聞こえてきます。会社が守るべき、秘密情報って何でしょう?

ねえ、よっしー。こんぷら社との秘密保持契約って結んであったっけ?取引基本契約書は記憶にあるんだけどな…いかん、いかん、記憶が…。

えっ?ナニ契約書ですか??

だから、秘密保持契約書!

秘密保持??? やだっ、 秘密だなんて、なんだか妖しいひ・び・きですね~☆

あんた、それだいぶ違うと思うよ…(ま、止めないけどね)でも、秘密保持の秘密って確かに本当のトコ、なにが秘密なんだろ?

おふたりさん、お悩みのようね。実は秘密保持契約の締結の際、「秘密」をどのように、どの範囲で定義するかは、厳密にはけっこう難しい問題なのよ。でも、まずふたりが確認すべきは、契約や法律で保護される、法的に正当な秘密は何かってことかしら。

ゆき先輩!今回登場はやいです!

はやくて悪かったわね。

いやいや、そんなことはひとことも…。

ふたりとも、ちゃんと覚えておいて。これから継続的にお取引していく企業さんとは、正式な契約関係に入る前に、必要ならば必ず秘密保持契約を結ぶこと。これ、もうビジネスの常識ね。実際に取引が行われる際はもちろん、取引に至らなくても、取引検討のための情報開示の段階で、秘密保持契約が結ばれてないとリスクがとっても高い場合もあるわ。

えっと、例えば、最先端の技術開発を他社と共同でおこなっていくような場合ですよね?

そうね、そのとおり。まさに経営に直結する企業機密を開示するわけですものね。でも、なにも最先端の技術でなくたって、日常にお取引している外注先や業務委託先との間でも、秘密はたくさんあるのよ。

といいますと?

例えば、生産工程における部品の個数とか、販売マニュアルとか、あるいは外注品の納期といったような情報も、秘密としてきちんと管理されていて、公然と知られていなければ、営業秘密ですからね。

へえ~、けっこう幅広いんですね。でも、そんなにいろいろ秘密があるのに、もし取引先と秘密保持契約を結んでいなかったら、秘密をばらされちゃうかもしれないんですか?

そんなことはないわ。例えば、営業秘密の要件をみたす他社の情報を不正に入手したり、使用したり、開示したりすれば、不正競争防止法で規定されている「営業秘密不正行為」(不正競争防止法2条1項4~9号)として、不正競争行為に該当するのよ。

営業秘密不正行為???

これに該当すれば、たとえその企業と秘密保持契約を書面で結んでいなかったとしても、営業秘密として保護されるケースもあるから、秘密保持の義務があるといえるわね。ただ、この要件というのが厳密で、要件を満たしていなければ、法律で保護されない秘密になってしまうわけね。だから実務では、秘密保持契約が有効になってくるし、お互いにあらかじめきちんと合意しておく必要があるわけ。

おっ、盛りあがっているな。秘密保持っていったら、個人情報がらみの場合も要注意だな。例えばウチでも、顧客の個人情報がはいったDMの配送を外注してるだろ?個人情報の適切な管理は、我が販売促進部も今いちばん神経使っているところだからね~。

なるほど!さすが現場のご意見。

単に契約書があればいいって問題じゃないわけよ。実態が重要ってことだな。実態がなければ重大なコンプライアンス違反っすもんね、ゆき先輩。

そのとおり。秘密保持契約の合意があれば、確かになにか問題が発生したとき、損害賠償の責任追及といった手段が行使できるわ。でも、一番重要なのは、秘密情報が漏洩しない仕組みや管理システム。そして情報を漏洩させないこと。

そういえば、私たち従業員も、会社に対して秘密保持義務がありましたよね。

そうね。当社の場合は就業規則でも定められているわ。企業としては、対外的な情報管理はもちろん、社内的にも情報管理がきちんとしていることが不可欠ですものね。例えば、企業秘密はその内容を知るべき社員に限り、情報開示する仕組みになっているとか、アクセス制限の管理がきちんとなされているとか、まさに日常業務の隅々に関わってくることよね。

なるほど~。いや、本当にそうですよね。

先輩~!ありましたよ。こんぷら社との秘密保持契約書。ちゃ~んと結んでました~!

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