ビジネスをしていくうえで、毎日の業務ときってもきれない関係-そのひとつが、お客様や取引先との契約行為ではないでしょうか。契約書の作成って、なかなか難しかったりしますよね…。
は~、やれやれ。
どうしたんですか?お疲れですね~。
ちょっと聞いてくれよ。新しいお客さんと取引しようとしてるんだけどさ、契約書の社内チェックが厳しい厳しい。
なかなかウチの法務部のOKがでないんです~(涙)こんな紙切れ数枚のために悔しいですよね~。
ちょっと、契約書を紙切れとは、聞き捨てならないですね。
あっ、ゆき先輩!かと思いきやみち先輩!
コンプライアンス推進室としては、みなさまに契約書の重要性はキチンと把握していただかないと。
そうね。いいかげんな契約書で契約を結んでしまうと、あとで泣くだけじゃすまなくなるわよ。
ゆき先輩~。またそんな恐いこと言っちゃって。
あら、脅しでもなんでもないわよ。確かにネ、わざわざめんどくさい文書を締結しなくたって、口頭でだって契約は契約だけどね。
契約自由の原則ですね。
契約自由の原則?
個人や法人という権利主体が、契約に関して次のような自由をもっているってことですね。
1.契約するかしないか(契約の自由)
2.誰と契約するか(契約の相手を選ぶ自由)
3.どんな内容の契約にするか(契約に盛り込む内容の自由)
4.どのような方法の契約にするか(書面?口頭?─契約形式の自由)
契約の自由は、近代私法の三大原則のひとつといわれていますからね。
そうね。要は、契約の方式も含め、商取引に関するルールは当事者間で自由に決めてOKってことよ。そしてね、ビジネスにおいて当事者間で決めたルール(=契約)は、多くの場合、法律よりも優先されるのよ。
へえ~、そうだったんですか!!じゃあ法律よりも契約のほうが重要ってことですよね??
う~ん、その言い方は語弊があるかな?
法律には、当事者同士で合意したルールより法律が優先する「強行規定」と、当事者同士で合意したルールが法律より優先する「任意規定」がありますからね。
そのとおり。ビジネスに関係がある規定が多く含まれている、民法や商法の規定の多くが任意規定となっているわ。それらの任意規定に対しては、当事者間で決めたルールが優先されると言えばいいかしら?
ということは、その契約自由の原則に従うと、仮に、契約書はなしで、口頭のみで契約とするっていう合意が当事者間で形成されれば、契約書はいらないケースもあるってことですよね?
原則としてはそういうことになるわね。でもね、このように契約は自由という原則があるからこそ、ビジネスにおいて契約書がとっても重要よ。
といいますと?
契約が成立しているってことは、それに伴い、法律上の権利や義務が発生したり消滅したりしているってことよ。その意味で、契約には法的な強制力があるといえるわ。契約行為っていうのは、れっきとした法律行為なのよ。例えば、一般に契約を破るとどうなる?
えっと、例えば損害賠償とか…?
でしょう?例えば、ある契約によって、当事者の間に、法律上の権利や義務を発生させる。もしそれが契約どおり遂行されない場合には、損害賠償を発生させたりもできる。そんな法的な強制力を有するのが契約。その契約を結ぶときに、契約書がなくて本当に平気?
たしかに、後々もめた場合のためにも、文書を残す必要性はありそうですね。
そうね。別に後にトラブルが発生しなくても、契約書を作成することによって、契約を結ぶそのビジネスの内容を明確にすることができるじゃない。それだけでも、とても重要なことだと思わない?
確かに、法務部のチェックのおかげで、リスクを再確認できたりして、商売に対して慎重になれるっていうメリットはあるかも…。
いい?契約書は、会社に権利や義務、あるいは債権や債務を発生させたり消滅させたりする法的文書なのよ。
う~ん、法務部のチェックが厳しくなるのも当然なわけか~。
そのとおり。
ちなみに、法における任意規定ではなく、強行規定に対しては、当事者間の合意によっても修正できないんですよね。
いくら当事者間でルールを定めて契約書が締結されていても、法律上の強行規定が優先ってことですか?
そうなの。これは契約自由の原則っていうのが、当事者間が対等な立場の場合において成立するものと考えられているからね。だから、当事者の一方が強者で、一方が弱者と考えられる契約の場合や、そのほか公益の秩序維持の観点などから、時に自由に制限がかかることもあるの。この点も注意が必要ね。
契約自由の原則に修正がかかるということですね。
例えば、独占禁止法や下請法関係、それから消費者契約法や特定商取引法といった法律には、関連する契約に関して強行規定が含まれているわ。
げげっ。俺らにも関係ありそうな法律ばっかり…。
契約はビジネスの基本。とはいえ複雑だし、全部自分で判断できなくて当然ともいえるわ。必要に応じて、上司や社内外の専門家に相談できることがとっても重要ってことね。さあ、ちゃんと法務部のOKがでてから取引を始めてちょうだいね!!
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