第一法規株式会社|教育研修一覧

2007/02/13号

~取締役だからこそ取引には責任を持って…~の巻

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ついつい仕事に熱くなりがちなそこのあなた!(って筋野さん?)、そんなみなさんが将来責任のある地位についた時…問題になってくることも出てきそうです。つい良かれと思って熱くなった取引でも実は問題があるかも…。

筋野さんちょっといいですか?

今、取引先への伝票整理で忙しいんだよな。なんだよ。

いや、その取引先との関係で今度、取締役の一人が責任追及されるって聞いたから…。いつも怪しいことばっかし言っている筋野さんの耳にもいれておこうと思いまして…。

たなやん、いつから俺に意見するようになったんだ…!で、その責任追及されるって何でなの?

実はその取締役なんですけど、当社が全株式を所有している「こんぷら産業」の代表取締役も兼ねているんですが、他の取引先より当社の製品の販売価格を低く設定していたんですよ。その販売価格に関して当社の取締役会で承認されていなかったってことが問題になっちゃっているようで…。

「こんぷら産業」って当社の関連会社だろ、そこへの販売額を安く設定するっていうのは当然のことだろ、設定した取締役、俺よく知ってる人だけど熱い人だよ。絶対悪気があってするような人じゃないよ。当社の取締役会もそんなことぐらいで責任追及するなよなあ。

「しーっ」筋野さん大きな声で今の発言はマズイですよ。でも筋野さんの言うとおりですよね。こんなことで責任追及されちゃかわいそうですよね。

たなやんも筋野くんも会社っていう組織をよく分かっていないようね。こんなもんだったら将来責任ある立場になった時苦労するわよ。

あ、ゆき先輩!

このような取引は「利益相反取引」っていうの。取締役個人や第三者と株式会社の利害が相反する場合において取締役が会社の利益を犠牲にして自己または第三者の利益を図ることね。第三者の利益を図る場合が含まれるので、取締役が個人として会社と取引する場合だけでなく、第三者の代理人や代表者として会社と取引する場合にも、この利益相反取引に該当するとされているの。

「利益相反取引」は新会社法において、取締役会設置会社では取締役会の承認取締役会非設置会社では株主総会の承認が必要ですね。

今回の取締役の「こんぷら産業」への取引はこの「利益相反取引」を会社(取締役会等に)諮らないで行ったことが問題だわね。「こんぷら産業」へ他の取引先よりも安く商品を卸すということは結果的には当社としては不利益に当たるし、そのような取引は取締役の独断で行ってはいけないということね。

「利益相反取引」をした場合のペナルティを整理してみますと
 1)私法上の効力
  →取締役会の承認を得ずになされた「利益相反取引」は無効とされる
 2)民事責任
  →取締役の会社に対する損害賠償責任が生じる恐れがある
 3)過料の制裁 
  →「利益相反取引」の事後報告義務に違反すれば、取締役会の承認の有無に関わらず、過料の制裁がある。
等ですね。

ふーんそうなのかあ?俺もそろそろ責任ある立場への打診がありそうだからその辺のこと、頭に叩きこんどかなきゃいけないな。ゆき先輩・みち、非常に勉強になったよ。

そうですね、筋野さんに打診があるかは別として、もし取締役とかになったら、ついつい情に熱くなって「社内調整なんか後にして俺に任しとけー」ってどんどん取引進めちゃいそうですからね。

そんなことが起こらないようコンプライアンス推進室のメンバーで見守っていますからね。

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