本を読んでいたときに載っている図に、『出典』なんて書いてありますよね。今までそんなに意識したことのない方もいるでしょうこの部分、著作者の権利を主張していることはご存知ですか?表現されたものに隠された権利、ちゃんとチェックしておきましょう!
え~と、この出典は…。
あれ、筋野さんお坊さんにでもなるんですか?似合わない事はやめておいた方がいいですよ。
そうそう、頭を丸めて…、って違うわっ!出家じゃなくて出典!メルマガだからって、文字を見ないで耳で聞け!
で、なんで出典なんか調べてるんですか?あ、そういえば今度社内で営業の研修の講師やるんでしたっけ?見かけによらず細かく調べてますね~。
当たり前だろ。人前でやる以上、しっかりとした情報に基づいて受講者の理解を促す。そうでなければ研修なんてやる意味ないからな。んでもさっきからこの図の出典の著作者が分からないんだよな。ネットも調べて、発行元にも確認したんだけどあまり前のことで分からないって言うし、もう書かないでもいい気がしてきたよ。
ずっと調べて分からないならいいんじゃないですか?どうせ社内の研修だし、本人に漏れることはないですって。
だよな~、じゃあこの図はそうゆうことで。
ほんっとに懲りない二人よね、あなたたち。
…そろそろいらっしゃるころだと思ってました。
ちょっと待ちなさいー。あなたたち、最近知的財産権で注意したばかりよね、ちょっとは自覚してもらわないと。
やっぱり出典を明記しないとまずいですか?
当たり前でしょ!そもそも著作権をなんと心得てるの?引用と転載の違いから説明しなくてはならないようね。
引用と転載って正直どこが違うのか、分からないんですよね。
簡単にいうと、引用は論評等の目的で他人の著作物を自分の著作物の中で利用すること。転載はその範囲を超えて、他の印刷物に利用してしまうことですね。原則として、改変しないこととされていますね。
そして、引用の場合は、公表されていることや、引用することに合理性があることなど複数の要件があることを忘れてはいけないわね。トラブルを避けたいなら、出版社や著作者とちゃんと書面で取り交わしておくといいわ。
でも、今回みたいにどうしても著作者と連絡が取れない場合はそうすればいいんですか?もしかしたら相当古い本から見つけたので、著作者が亡くなられているかもしれないし。
著作権は、著作者の死後から50年は保護されるとされているの。そんなときは、その著作権を相続した方がいるはずよ。そしてその方などがどうしても見つからないときのために、文化庁では著作権者不明等の場合の裁定制度を設けているわ。ただし、その制度を利用するためには、相当な努力をした場合、とされているから、事前に文化庁に相談してみるのがいいわね。ちなみに、転載等の許諾を得るのは基本的に著作者が行うとされているのよ。
あ~、そんなに面倒くさい手続が必要なら、自分で似たような図を作ってしまえばいいんですよね。それなら俺に著作権があるし。
それはかなり危険な行為ね。筋野君の独創性ある表現で、全くのオリジナルのものであればともかく、図の形を変えただけなど創作性が認められない場合には元の著作物の著作権侵害になる可能性が高いし、さらに、その改変の仕方が著作者の意に反するものであったとすると、著作権だけではなく、著作者人格権侵害まで問題とされる可能性があるわよ。自信がないなら、危ない橋を渡ることはしない方がいいわね。
そうなると正攻法でいくしか方法がないってことですね。くそー、なんか楽できる方法がないか、探しても無駄か…。
コンプライアンスの観点からも、それが賢明な判断ね。楽してしまったがために、訴えられたりしたらたまったものじゃないし。それに著作権に関してはまだまだ細かい取り決めが存在するのよ。自著から図を使用する際にも問題になることもあるから、神経質になるくらい気をつけてもらわないと。二人にはもっと勉強してもらわないといけないわね。
講師なんて引き受けるもんじゃないな…。
参考:文化庁HP
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