今度、社長の秘書になった派遣社員の女性は数々の資格を持つスーパーハケン。最近仕事が忙しくなった足尾はその能力を狙って何だかよくない事を考えているようですが…
ふう~、参ったなあ~。
どうしたの足尾さん、うつろな目をして… すごく疲れている表情をしているわよ。
いや~、さっき上司に呼ばれて英語の翻訳の仕事を頼まれちゃってね~。僕、英語苦手なんだけど「任せてください」なんて引き受けちゃって参っていたところなんですよ。A4で30頁くらいの分量で毎週金曜日が締め切り、しかも来週から3ヶ月間も続く業務なんですよ。金曜日は飲みに行きたいのに毎週残業だなあ…
それは大変ね~。まあ、そんな表情だとうまくいく仕事もはかどらないから秘書室の横にある休憩コーナーで一息いれてきたら。
あ!そういえば、社長秘書に昨日から新しい人が来たとか言ってたなあ~。かなりの美人だとか… 早速秘書室に行って目の保養… いや、お話でもしてくるかなあ~。
(このセクハラ足尾が!!!)あんまり失礼なことしてはだめよ… って、もういなくなっちゃった…
(数分後)
はあ、はあ~。大麦さん聞いてくださいよ~。
また、美人だったとか自慢するんでしょ。
いや、確かに美人だったんですけどね。今度の社長秘書の派遣の方は英語バリバリなんですよ。社長もほとんど会社に来ないし、秘書の方も暇そうだったので早速さっきの翻訳の件を頼んできちゃった。
それってなんだかまずいんじゃ。
まずいわよ!!!
で、出た~!
何よ!人を幽霊のように扱って。さっき、社長秘書の所に行くときは目をキラキラさせて飛んでいったのに… 足尾さん、さっきの頼み取り消してきなさい。あのね労働者派遣の場合、派遣先と派遣元会社との間で派遣契約を結んで、その中で派遣社員が従事する業務内容を特定しているの。だから派遣契約で特定された業務以外の仕事を派遣社員に行わせることは許されないのよ。さっきの社長秘書の方の場合、翻訳の業務は契約の中に入っていなかったはずよ。
そうですね。労働者派遣法は強行法(当事者間の合意の如何を問わずに適用される規定)ですから、その派遣社員の方が同意しても、違法ですね。違反した場合は、派遣元会社および派遣先が厚生労働大臣から指導、助言を受けることもありますので、注意が必要ですね。
特に、今回のように業務内容が会社の本来の業務を、それなりに継続した時間行わせることを予定しているものであれば、労働者派遣法に違反し許されないと考えて間違いないわね。もし社内に翻訳できる人がいなくて、どうしてもお願いしなければ場合は、派遣元会社と協議してその派遣社員の方の従事する業務の内容を追加してもらい、派遣契約上もきちんと変更の手続きを取る必要があるわね。
面倒くさいなあ。そ、そういえば、大麦さんこの間外国人のお客さんが来たとき流暢に話していませんでしたっけ。
残念、あれは英語じゃないのよ。足尾くんがんばってね。
そうなんだ… えりさん~、みちさん~、よっし~(誰か助けて…)!
最初から人に頼らずに自分で解決なさい!
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