第一法規株式会社|教育研修一覧

2010/01/26号

~悪事は必ず露呈する~の巻

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いつもお気楽なA社のコンプライアンス推進室。今日は、なにやら事件のニオイがぷんぷん……。何があったのでしょう?

大変、大変!隣の部の課長が懲戒免職だって!

何かあったの?

取引先からの入金を不正に着服していたらしいです。一度架空の口座に振り込ませてその現金を株で運用し、利益が出たのちに、課長自ら当社の口座に入金していたとか…。

スキミングね。

あ、えり先輩!

現金を着服する不正行為の中でも、会社の会計システムに入金する前に抜き取ることから、そう呼ばれているの。代表的な社内不正の手口の一つよ。今回は、これに気づいた取引先が、コンプライアンス推進室に通報して発覚したのよ。

あの課長が……、信じられないわ。

これを機に、社内不正について考えておきましょう。社内不正って、ほかにはどんなことがあげられるかしら?

現金を着服する、経費精算をごまかす、在庫を不正使用する、取引先との癒着、売り上げの計上時期を操作する、過大に計上する……などですか?

そうね。類型化すると、「資金の不正流用」「汚職」「不正な報告」の三つが主なものになるわ。

(あっ!!もしかして、この前、えり先輩の机の上にあった名古屋限定の味噌カツ味ポテトチップスを黙って食べたことも、不正にあたるんじゃ…??!!)

ねえ、足尾くん、「不正のトライアングル」、つまり不正のリスクが高まる三つの要素って知ってるかしら?

(ぎくっ)、えーっと「食欲」「秘密主義」「ご当地限定」かな?

???(気を取り直して)まずは不正を起こす「動機」の存在ね。たとえば、「お金がない」「業績をあげたい」「失敗を隠したい」といったこと。今回の課長の場合は、家族に内緒の借金があって、その返済が動機だったらしいわ。

(俺の場合は、「おなかがすいた」だな……(汗)。)

それに、不正を可能とする「機会」の存在ね。今回のケースは、課長本人が支払い伝票の発行と決裁を兼ねていて、他者のチェックが入っていなかったの。こういう場合、伝票の発行者と決裁者を別の人にする、別の部署でチェックするなど、不正を未然に防止する内部統制システムを確立する必要があるわ。

(誰も見ていないと思うと、ついやっちゃうんだ。わかるなあ……。)

最後に自己の行為の「正当化」。「みんなやっているから」「少額だから」「安月給で酷使されているんだから、これぐらいいいだろう」などといったことね。

(そうそう、「えり先輩が太らないように、俺が代わりに食べてあげよう」っていう思いやりもありつつ……だったんだよな……。)

この3つが揃うと不正リスクが高くなるといわれているわ。こうしたことに気をつけて、少しでもリスクを減らすことが大切ね。「動機」を減らすには、悩み、不満やプレッシャー、ストレスを個人で抱え込まないような職場の雰囲気づくりが大切よ。「正当化」をさせないためには、不正を許さず、誠実な働きが評価される企業風土を醸成することね。でも、この二つは個人の倫理観にもかかわってくるから、会社として一番できることは、不正を未然に防ぐ内部統制システムを構築して「機会」を減らすことなのよ。

ちなみに、社内不正って法律違反になるんでしょうか(びくびく)?

ケースによって違うわ。たとえば、会社のお金を着服した場合は、「横領罪」「詐欺罪」「背任罪・特別背任罪」が適用されることがあるわ。でも、たとえ刑事事件になることはなくても、会社のお金を自分のポケットに入れた人を、会社がそのまま許すことはないわね。

(ぎくっ!横領罪っ?!)

「悪事は必ず露呈する」ことを肝に銘じることね。そして、自分や自分の家族の一生を棒に振ることになるのを忘れないで。

もう食べません!!!!(泣)

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