業績確保とコンプライアンス、「どっちを取るの~?」と板ばさみ。「コンプライアンスを選ぶべきなんていうのは理想論だ!」というのが、あなたの本音ではありませんか??
なあ、ちょっと相談があるんだけど。
な、何ですか?(あらたまって相談なんて、こわいな~)
今期の売上目標達成まで、あと少しなんだ。
さすがフットワークだけは軽い筋野さん、目標達成すれば、来期は昇格ですね。
「だけ」って何だよ! まあいいや。それが今、契約交渉中のある案件が、ほぼ受注確実なんだけど、お客様の社内手続きに時間がかかってるみたいで、正式な契約締結が来期にかかってしまいそうなんだよ。でも、絶対取れるんだから、今期の売上として立てちゃっていいよな?
う~ん・・・。でも、目標達成まであと一件なんですし、ここは柔軟に考えていいんじゃないですか?
こういう話をえり先輩が聞いたら、目くじら立てそうだけど、現実的に営業の現場では仕方ないよなー。
こーんーにーちーはー(怒)。
ふがっ!!!(飲んでいたコーヒーを噴き出す)
「ふがっ!!」じゃないでしょっ! さんざんコンプライアンス研修を受けて、「いけないこと」ってわかってるのに、どうしてそうなるの?!
(急に開きなおって)あのっ! お言葉ですけど、えり先輩は営業の現場にいたことあるんですかっ?! 俺らには、ノルマがあるんですよ!!
そうですっ! 管理部門の人にはわかってもらえない現実があるんです!!
本音が出たわね。いけないと頭ではわかっていて、「これってコンプライアンス違反なのでは…?」と頭をよぎるのに、やむを得ない理由をつけて進めてしまうのね。
筋野さん、もしこれがばれてしまったら、どうなりますか?
うーん、怒られることは間違いないよな…。
怒られるだけですめばいいけど、目標達成はもちろん取り消しになるし、懲戒処分を受ける可能性もあるのよ(※)。場合によっては、会社に対する詐欺罪に問われることにもなりかねないわ。粉飾決算につながれば、会社や役員が会社法や金融商品取引法違反に問われて、取り返しのつかない事態になることだってありえるのよ。
うーん、そこまで考えてなかったな…。
つまり、リスクを想像できていないのね。
自分では思いつかないリスクというのもありますよね。
人生を棒に振るリスクを取るくらいなら、別の対応策を考えて、今期の目標達成を目指すほうが自分のためだと思わない?
そうですね…。あ、そういえば、もう1社受注見込のお客様がいたのを忘れていました! こうしている間に、すぐアプローチをかけてみます。
会社や法律のきまりと業務のジレンマに立たされたとき、違反になるけどしょうがない、仕方がない、などと正当化して、そのまま進めてしまわずに、一歩立ち止まって、それを進めたときのリスクを想像してみて。その上で、本当にそのリスクを取ってもいいのかを考えることね。別の対応策はないのか、もしくは今後同じジレンマに陥らないために未然に防ぐ手段はなかったのか、考えてみてね。
※会社によって、処分の有無や内容は異なります。
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