これって、コンプライアンス上、問題あり??? と思っても、発言力、影響力の強い人が「問題なし!!」と言い張ると、場の空気が流されてしまう…。そんなことってありませんか?
たなやん、今週は官庁営業強化週間だ!まずは○庁の上村課長のところへ行くぞ!
はいっ!
手土産に上村課長の好物のコンプラ饅頭、買っておいてくれよな。
(うわー言いづらいなあ…。)あの~、公務員に手土産をお渡しするのはまずい気がするんですが…。ねえ、よっしー?
(わっ!筋野さん、鼻息が荒くなってて怖い~。)はい、えり先輩が聞いたら卒倒しちゃうと思いますが…。
また、お前らは固いこと言うよなー!今までも何度も持っていってるけど、問題になったことなんてなかったんだから、大丈夫。今回だけ手ぶらで行って、失注したらどうするんだよ。さっさと買って来いよ!
やっぱりそうですよね!お菓子ぐらいで捕まるわけないですしね。じゃあ、今から買ってきますっ!!
(バタン!!と何かが倒れる音)
大変!えり先輩が倒れてます~!
えり先輩、大丈夫ですか!!??
(むくっと起き上がって)大丈夫なわけないでしょ!全部聞いてたわよっ!
私がいながら、すみません…。
まずは言っておくけど、お菓子を渡すことも、国家公務員への「物品の供与」にあたり、国家公務員倫理規程に抵触する可能性があるばかりか、贈賄罪にあたる可能性もあるわよ。前にも勉強したでしょっ!
はい…。
その上で、今回みんなに話したいのは別のことよ。たなやんもよっしーも、コンプライアンス違反だとわかっていたのに、筋野さんが「大丈夫」と言い張った途端、違反行為が容認されてしまう雰囲気が作られてしまったのね。つまり、影響力の大きい人、いわゆる「声の大きい人」の発言で、黒が白に変わってしまったわ。
そういうことって、現場ではよくあることだと思いますよ。ましてや白黒はっきりしないグレーな案件だったりするとなおさら、「声の大きい人」が白といえば、白になっちゃいますから。
直属の上司だったりすると、業務命令だし、逆らいにくいですよね…。
それは違うわ。
でも、実際のところ、上司や「声の大きい人」に「それはコンプライアンス違反だからできません!」なんて、意見できませんよ。
確かに、難しい問題ね。でも、普段から自分の意見を上手に言えるよう努力をしていくことが大切なのよ。たとえば、アサーションも一つの効果的な手法ね。
アサーション?
自分も相手も大切にしながら、自分の意見、考え、気持ちを率直にその場にふさわしく表現することよ。
今回のように、葛藤や不安がある場面で、自分の意見を上手に伝えたい場合、どうしたらいいんですか?
「DESC法」の考え方が使えるかもしれないわ。
DESC法?
次の4つのステップを踏んで、自分の気持ちや考えを伝える方法よ。D(Describe:事実を客観的に描写する)⇒E(Express:自分の気持ちを表現する)⇒S(Specify:解決策を提案する)⇒C(Choose:選択肢を示す)、に当てはめて自分の意見を伝えてみるの。
難しそうですけど、実際にはどう言えばいいんですか?
たとえば、「公務員に手土産を渡すのは、確か、国家公務員倫理規程で禁止されているはずです(D)。たしかに、筋野さんのおっしゃるように何も工夫せずに伺って受注に影響しないかは心配ですよね。でも、私はコンプライアンス違反が心配なので、手土産を持っていくことは控えたいと思います(E)。今から提案の内容を見直して、「今回はあえて手土産などをお持ちしませんでしたが、それに負けない良いプランをお持ちしました!」などとご説明するのはどうでしょうか(S)。今からなら時間がとれますし、改善案も出せそうです。それに、いい案がないかメンバーに相談してみることもできますよね(C)。」などよ。
客観的な事実と自分の気持ちを分けて伝えるってことですね。
そうよ。さらに妥協案や解決策などの提案を付け加えて、最後に選択肢を示すの。
なるほど、すぐに完璧にはできそうにないですけど、少し言いやすくなりますね。
すぐに実践するのは難しいと思うけど、どう伝えたらいいか迷うときに、この順序で整理して表現していくと、相手に伝わりやすくなるわ。今回はDESC法を紹介したけれど、ほかにも、自分の意見を適切に伝えていくために、アサーションのさまざまな考え方を理解していくことが役に立つはずよ。一緒に勉強していきましょうね。
自分の意見を上手に伝えられるようになるには、こうした工夫を繰り返していくことが必要なんですね。影響力のある人が白と言えば、黒もグレーも白になる。そんな職場にはしたくないですし、日頃から自分の意見を上手く伝える工夫をしていきたいと思います。
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