大麦さんが出社すると、朝から話を聞いてほしそうな顔で足尾さんが待ち構えています。
大麦さん、最新型暖房機「ぬくぬく瞬間暖房」のこと覚えてますか?
あのリコール寸前だった商品のこと?
そうです。あの後どうなったか、報告していなかったと思って。
どうかしたの?
実は、大変だったんですよ。部長に報告したら、部長が「ナイトに報告しないと」って言い出して。
さすが部長!
あっ、えり先輩。
さすがって、部長の親父ギャグのことですか?
そうじゃなくて、「ナイト」のことよ。
「ナイト」って、正式名称はなんでしたっけ?
独立行政法人製品評価技術基盤機構よ。通称ナイト(NITE: National Institute of Technology and Evaluation)というの。
そうでした、思い出しました。
足尾くんは、消費生活用製品安全法っていう、一般消費者が生活に使う製品を対象にした法律があるのを知っているわよね?
一応知ってます。でも、一般消費者が生活に使う製品って、具体的には、どんなものでしたっけ?
そうね、例えばホームセンターに置いてあるような製品のことよ。
「ぬくぬく瞬間暖房」とかのことですね。
消費生活用製品安全法では、事故報告制度を定めているの。
事故報告制度ですか?
製造・輸入事業者に対して、重大な製品事故が発生したことを知ったときは10日以内に、消費者庁長官への報告書を提出するように義務づけた制度よ。
重大製品事故って?
死亡、重症病、一酸化炭素中毒などが生じた事故や火災などのことよ。
重症病って?
治療に30日以上かかる場合のことね。
「ぬくぬく瞬間暖房」ではそんなことにはなっていませんよ。
ここで、やっとナイトの登場よ。事故の程度が重大ではないときには、ナイトこと、独立行政法人製品評価技術基盤機構に報告することになっているの。ナイトに報告後は、重大製品事故で消費者庁が行っていることをナイトが行っていると考えていいわ。
えっ、どういうことですか?
つまり、ナイトが、事故情報の公表、収集・分析をしているのよ。
部長にも同じことを言われて、ナイトに報告したんです。そうしたら、ナイトのホームページの「最近の製品事故情報」に載ってしまって・・・。
同様の事故を防止するためだから、仕方ないわよね。
それだけじゃありませんよ。寒い中、在庫を処分する作業を一人でやらされたんです。
そういうのを「事故責任」というのね。
消費生活用製品安全法では、報告・公表・命令について定めています。
<報告> 製造・輸入業者は、死亡、重傷、火災などの重大な製品事故が発生した場合、消費者庁長官に報告書を提出しなければならない。
<公表> 消費者庁長官は、事故情報を収集・分析し、その結果を広く国民に公表して、第二の重大事故を防止する。
<命令> 消費者庁は、製造・輸入業者に安全でない製品の製造や輸入を禁止・回収するように命令する。
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