第一法規株式会社|教育研修一覧

2011/06/28号

~独占禁止法と知的財産権の絶妙な関係~の巻

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コンプライアンス研修から戻ってきた、たなやん。資料を手に、ちょっと不思議そうな顔をしています。

おう! たなやん、どうした?

今、研修で独占禁止法の説明を聞いてきたんですけど。

ああ、オレもこの前、受けたぞ。

独占禁止法に、「著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない」という一文があるんです。どうしてこんなことが書いてあるのかなあ、と思って。

え?そんな内容あったっけ?

あらあら、二人でどうしたの?

あっ!えりさん!

えりさん、ちょうどよかったです!著作権法、特許法、実用新案法、意匠法や商標法による権利の行使と認められる行為には独占禁止法を適用しないって、どういうことですか?

いい質問だわ。じゃあ、ちょっと説明が長くなるけど、いちから説明するわね。

はい!

まず、著作権や特許などの知的財産権は、知的創造活動の成果について、創作者に一定期間認められる権利よ。この権利を認めることで、事業者の研究開発意欲を刺激したり、新たな技術や製品を生み出す原動力となったりするなど、競争を促進する効果が期待されているの。

競争を促進する効果…ですか?

そうよ。さらに、技術にかかる権利を認めることによって、円滑な技術取引が行われるようになるから、その点でも競争を促進する効果が期待できるの。

Wの競争促進効果ですね!

そういうことね。じゃあ、独占禁止法の目的はなんだと思う?

えっと・・・。

公正かつ自由な競争を促進することにより、消費者の利益を確保し、経済の民主的で健全な発達を促進することよ。

公正かつ自由な競争を促進・・・。そうか!これら二つの法律の目的は同じだったんですね。

そのとおり!知的財産権を保護することによって、市場の競争を促進する効果が期待されるから、「知的財産権の権利の行使」と認められる行為には、独占禁止法は適用されないのよ。

わかりました!

ただし、目的や内容などによって、「権利の行使」とは認められない場合もあるから注意してね。

ちょっと待ってください。それって、具体的にはどんなことなんですか?

たとえば、知的財産権の創作者が他の新規参入事業者にそれを利用させないようにするような行為は、一見、「権利の行使」と思われがちだけど、実質的には権利の行使と評価できない場合があるでしょ。このような場合は、独占禁止法が適用されるの。

無制限に「権利の行使」と認められるわけじゃないんですね。

そうよ。知的財産制度の趣旨を逸脱したり、この制度の目的に反したりする場合には、市場の競争に悪影響を及ぼすため、「権利の行使」とは認められない場合があるの。そのようなときには、独占禁止法が適用されるわ。

市場の競争を促進するという目的を逸脱していないか、という観点で考える必要があるんですね。

【知的財産の利用に関する独占禁止法上の注意点】
「知的財産権の権利の行使」と認められる場合は、独占禁止法は適用されない
「知的財産権の権利の行使」と認められる行為でも、その目的や内容などが知的財産権を保護する趣旨や目的に反する場合は、独占禁止法が適用される

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