昔は常識だった???でも時代が変わった今では、法律に違反してしまうこともあるのです。
筋野さん!今度、コンプライアンス推進室主催で、インサイダー取引防止の講習会を開催するので、ぜひ参加してくださいね。
おお! インサイダー取引って、早耳情報を競って株を買うことを禁止するっていうアレだろ?昔はよくあったことだって、このあいだ仲良くなった取引先のえらい人がいってたぞ。
ええっ? そうなんですか?
たしかに、20年以上前だったら、早耳で株を買っても、法律違反とされたり、刑罰を受けたりすることはなかったでしょうね。
あっ、えり先輩!
なっ? 俺の言ったとおりだろ?
えり先輩、それって本当なんですか?
ええ。日本で、インサイダー取引の規制が導入されたのは、1988年に、当時の証券取引法が改正されて以降なのよ。
どうしてそのとき、規制が導入されたんだろう?
いい質問だわ。ふたりは、インサイダー取引、つまり内部者取引が、なぜ違法とされているか、説明できるかしら?
えっ???
昔はOKだったわけだもんな。なんでだろう?
ふたりとも心もとないわねー。インサイダー取引がなぜ問題なのかをきちんと理解するには、「証券市場の公正性の大切さ」を、理解する必要があるのよ。
証券市場の公正性、ですか?
証券市場というのは、不特定多数の投資家が、証券の売買に参加する場よね。
はい。
多くの投資家が自由に取引に参加すべき市場なのに、一部の内部関係者だけが、証券の価格に影響する重大な情報をあらかじめ知って取引をしているとしたら、どうなるかしら?
それは不公平ですね。
そうよね。そんな不公平で信頼できない証券市場では、参加したい人もいなくなってしまうわ。
なるほど。
実は、はやくからインサイダー取引が禁止されてきた欧米と比べて、日本はインサイダー取引の禁止が遅れたの。その間、日本の証券市場が、海外の投資家から信頼されにくい状態が続いていたのよ。
そうだったんですね。日本の証券市場が信頼されないと、日本の国民経済も大きな影響を受けてしまいますよね。
そのとおりよ。証券市場の信頼性が失われるということは、資本市場そのものの存続の危機と言い換えることもできるわ。
だから、インサイダー取引に対する罰則は、法律改正のたびに強化されているんですね。
それに、摘発も強化されているわ。証券市場の国際競争が激化している今、日本の証券市場の信頼性確保は、国民経済の維持と成長にとって、不可欠なのよ。
昔と今では、大きく事情が違うんだなあ。
昔の常識が今は常識じゃないっていうのは、よくあることよ。
社会的な背景が変化するのに合わせて、ルールも変化するんですね。
そうね。時代の流れや変化を常に意識しておくことは、コンプライアンスの感性を養うためにとても大切なことだと私は考えているの。今度のインサイダー取引防止講習会も、そういう趣旨であらためて説明をするつもりだから、筋野さんも、ぜひ参加してちょうだいね。
はいっ!
・インサイダー取引(内部者取引)は、証券市場の公正性と信頼性を損なう重大な犯罪行為である。
・日本においては、1988年の証券取引法の改正(1989年施行)において、インサイダー取引の規制が導入され、現在は、金融商品取引法によって規制されている。
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インサイダー取引に対する罰則は、強化される傾向にある。
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