第一法規株式会社|教育研修一覧

2012/02/28号

~これもパワハラ、あれもパワハラ~の巻

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足尾さんの後輩も先輩も、それぞれの会社で、とんでもないことになっているみたいです。何かいい方法はないものでしょうか。

僕の後輩の話なんだけど、聞いてくれる?

どうかしたんですか?

上司から「お前みたいな仕事が遅いヤツがいると、みんなでカバーしてもしきれないよ。売上目標がクリアできないなら辞めてしまえ!」みたいなことを、何度も言われて、会社に行けなくなっちゃったんだよ。

まあー、ひどい話ですね。

すると、見るに見かねた周りの人たちが、反撃に出たらしくて。

えっ、どういうことですか?

怒った同僚たちが、その上司をみんなで無視することにしたって。

えっ!!本当ですか?

足尾さん、それもパワハラになるかもしれないわよ。

あっ!えり先輩!!パワハラは、上司から部下へのいじめや嫌がらせのことじゃないんですか?

職場のパワーハラスメントについては、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」との定義が示されたところよ。

「上司が部下に対して」ではなくて、「同じ職場で働く者に対して」なんですね。

厚生労働省が2012年1月に発表した報告(※)では、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われた場合も、パワハラに含める必要があるとされているわ。

部下から上司に対するパワハラもあるんですね。

さまざまな優位性を背景に、部下が上司に対して、隔離・仲間外し・無視などによって社内の人間関係から切り離した場合、パワハラにあたると考えられるわね。

うわー、なんか殺伐とした話ですね。この際だから、ぼくの先輩のことも聞いてもらえますか?

話してみて。

大学時代の先輩が、会社で仕事を与えてもらえないと悩んでいるんです。

それはお気の毒ね。何が原因なの?

会社の上司とそりが合わないらしくて、精神的に追い込まれてしまったらしいんです。優秀な先輩なんですけどね。

それもパワハラの可能性があるわね。

え?これもですか?

業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと、つまり「過小な要求」もパワハラになるの。

僕、パワハラについて、認識を新たにしました。

厚生労働省の発表のなかに、どういう行為が職場のパワーハラスメントにあたるかも示されているのよ。

パワハラをなくすためにはどうしたらいいんでしょう?

パワハラは尊厳や人格を侵害する許されない行為よ。まず、「職場のパワハラはなくすべきものである」という方針をトップが明確にするべきね。こうした組織としての方針の明確化は、相手の人格を認め、尊重し合いながら仕事を進める意識を浸透していくことにつながるの。

職場の一人ひとりが相手を尊重する意識を持つことが鍵になりそうですね。

パワハラを受けた従業員やその周囲の従業員も、問題の指摘や解消に関して発言しやすくなれば、この取組みの効果も期待できるようになるわね。

いい話になってきてよかったです。

取組みを進めるなかで、企業の存続・発展、職場の士気や生産性・企業イメージ、コンプライアンスの観点からも、対策の有効性が認識できるといいわね。

そのとおりですよね。これから、先輩と後輩に知らせに行ってきま~す。

足尾さ~ん、まだ、勤務中よ~!

パワハラ行為について、その傾向から、次のように分類することができる。
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
※「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」2012年1月30日参照

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