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2012/04/10号

~パワーハラスメントの法的な責任~の巻

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職場のいじめや嫌がらせ。あってはならないことですが、悩みをかかえる人や職場が多いこともまた事実です。職場の人権侵害を許さない意識改革が急務です。

2012年に厚生労働省が発表したパワハラの定義に、注目が集まっているわね。

パワハラは、必ずしも上司から部下に対して行われるとは限らないという内容でしたよね。

職場の人権侵害が、幅広くハラスメントにあたると認識されるように なってきたんですね。

パワハラは、人間の尊厳や人格を傷つける許されない行為よ。 パワハラについては、法的責任を問われることもあるのよ。

そうなんですか?

パワハラ行為で他人に被害を与えたら、加害者は被害者に対して、不法行為責任などを問われるおそれがあるわ。

えっと、不法行為ってなんでしたっけ?

他人の権利や利益等を違法に侵害することを、不法行為というの。他人に対してしてはいけないことをすれば、法的な責任を問われることがあるのよ。

職場のいじめや嫌がらせについて、民法の不法行為責任が認められた裁判例もあるんですよね。

ええ。たとえば、「合理的な範囲を超えて、従業員の能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる」といった行為は、厚生労働省の公表でパワハラの例の一つとしてあげられていたわよね

はい。

このような行為が、使用者の権限の濫用として、従業員に対する不法行為と裁判で判断されることもあるのよ。

へえ~。

事業を運営するにあたっては、業務に関連した不法行為を従業員にさせないことも、会社にとって重要ね。

どういうことですか?

ある従業員の第三者に対する不法行為が、会社の業務に関連して行われた場合、その従業員の使用者である会社も、第三者に対して責任を負うことがあるの。

使用者責任ですね。

パワハラについても、ある従業員が別の従業員にパワハラ行為をすれば、加害者本人が、被害者に対する不法行為責任を問われるおそれがあるだけなく、加害者の使用者である会社も、被害者となった従業員に対する責任を問われることがあるのよ。

なるほど~。

会社の責任といえば、会社には職場のパワハラ防止に努める義務があるんですよね?

ええ、そのとおり。会社には、従業員との労働契約にともなって、従業員が安心して安全に働くことができるように配慮する義務があるとされているの。たとえば、職場にいじめや人権侵害行為があることを認識していながら、適切な対応をとらなかった場合、会社は被害者となった従業員に対する責任を問われることも考えられるのよ。

職場にパワハラがあれば、職場の環境も悪くなってしまいますよね。

そのとおりね。職場で、不当に尊厳や人格を傷つけられるようなことはあってはならないわ。一人ひとりが互いの人格を尊重しあう意識を高めていくことが大切ね。

◆パワハラ行為は、不法行為となるおそれがある。
◆パワハラ行為は、行為者自身が不法行為を問われるおそれがあるだけでなく、
 会社も使用者責任を問われることがある。
◆職場のパワハラに気づいていながら放置すると、会社の責任が問われることもある。
◆職場のパワハラ防止と解決に向けた意識改革が、職場の一人ひとりに求められている。

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