お昼休み、足尾さんがご機嫌です。
足尾さん、なにかいいことあったんですか?
僕の大先輩が、仕事で発明をしたんだ。特許も取得できて、新商品で早速、使われることになったんだって!
わあ、特許を取得なんて、すごいですね!
さすが僕の先輩だろ? ま、特許とか、詳しいことはよくわからないんだけどさ。
特許を取得したということは、その発明が、「自然法則を利用した技術的思想の創作」のうち、高度なものとして認められたということね。
あっ、えり先輩! 特許について教えてくださいっ。
特許制度は、特許法という法律に基づいて、国が発明者などに特許権を与える制度よ。特許権の権利者(特許権者)は、その特許の実施を20年間独占することができるわ。
特許の実施を独占できるってことは、ビジネス上で大きな意味がありますよね。
そのとおり。だからこそ、特許を受けるためには、その発明が、産業上の利用可能性があること、新規性を有していること、その技術範囲内で進歩性があること、などの要件を満たすことが必要なのよ。特許を受けている発明は、「特許発明」というわ。
特許を受けるって、大変なんだな。
従業員が会社の仕事として特許発明をした場合、その特許の権利は誰にあるんですか?
いい質問ね。ふたりは、「職務発明」という言葉をきいたことはあるかしら?
???
会社の業務範囲に属し、その発明に至る研究・開発などの行為が、その会社における従業員等の職務に属する発明のことを、職務発明というの。原則として発明者である従業員個人に、特許を受ける権利があるとされているわ。
会社の仕事として研究・開発した結果の発明でも、発明者個人が特許を受ける権利をもっているんですね。
発明は発明者の努力と才能によって産み出されたものだから、発明者は特許を受けたり、特許を受ける権利を譲り渡したりすることができるのよ。
なるほど~。
ただし、職務発明の場合、会社も、その従業員に給与などの報酬を支払うことはもちろん、設備・研究費などを提供して、発明の完成に一定の貢献をしていると考えられるわ。
そうですよね。
僕の先輩も、会社による設備投資のおかげで、発明が完成したって言っていました。
そうよね。だから職務発明については、「原則として、発明者個人である従業員に特許を受ける権利がある」としつつ、会社はその発明について、「通常実施権をもつ」とされているの。
通常実施権ってなんですか?
通常実施権とは、一定の範囲内で、その特許発明を業として実施できる権利のことよ。
会社の貢献度を考慮しているわけですね。
また、職務発明については、会社が従業員から「特許を受ける権利」の譲渡について、事前に取り決めておくことも認められているわ。そして、会社に特許に関する権利を譲渡した場合、発明者である従業員個人は、「相当の対価」を受ける権利があるとされているの。
「相当の対価」に、基準はあるんですか?
一律の基準は特に定められていないわ。だから、会社と従業員の話し合いによる自主的な取決めで決定できるのよ。会社の経営環境や、従業員の研究開発環境など、当事者間の事情に応じて決定し、従業員に支払われることになるでしょうね。
ケースバイケースなんですね。
不要なトラブルを避けるためにも、契約や就業規則等で、特許権についてあらかじめ取り決めておくことが賢明ね。
よしっ、僕も会社と取り決めをしておこう~。
足尾さん、まだ研究もしていないのに、気が早いわよ!
◆特許発明は、発明した個人が特許を受け、その特許の実施を20年間独占することができる
◆職務発明の場合、特許を受ける権利は、発明者である従業員個人にあるが、会社もその特許発明に対する通常実施権をもつ
◆会社は、従業員から「特許を受ける権利」の譲渡について事前に取り決めておくこともできる。その場合、従業員は会社から「相当の対価」を受ける権利をもつ
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