第一法規株式会社|教育研修一覧

2012/08/28号

~整理解雇の必要要件~の巻

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昼休み、よっしーが、ニュースサイトを見ています。

熱心だな。なにか興味深い記事でもあったのかい?

あ、足尾さん。今度、A社で大規模なリストラが行われるそうですよ。

リストラってことは、従業員が解雇されるのかい?

そのようです。

二人は、リストラの本来の意味を知っているかしら?

あっ、えりさん!

「リストラ=解雇」ではないんですか?

リストラは、英語のリストラクチャリング(restructuring)の略称で、本来は事業の「再構築」を意味する言葉よ。つまり、事業を見直し、組織を立て直す「組織の再構築」がリストラであって、必ずしも事業規模や従業員数の変化を伴う必要があるわけではないわ。

そうだったんですね。

ただ、日本では、過去に不採算事業や部署の縮小等に伴って、人員の大規模な削減なども行われた経緯から、「リストラ=従業員の解雇」と理解されていることも多いようね。

確かに、人件費の削減は、企業にとって大きなコスト削減につながりますよね。

まあな。しかし従業員は簡単に解雇されてしまうんだな。なんだか寂しい話だよな。

足尾さん、会社は、従業員を簡単に解雇しているわけではないのよ。

そうなんですか?

会社が従業員を解雇するには、さまざまな条件が必要となるわ。

どんな条件が必要なんですか?

説明するわね。まず、解雇には、「普通解雇」、「懲戒解雇」、「整理解雇」の3種類があるわ。普通解雇と懲戒解雇が、労働者本人の原因に起因する解雇であるのに対して、事業縮小にともなう人員削減など、会社側の一方的な事情による解雇は、「整理解雇」にあたるのよ。

整理解雇、ですか。

会社側の事情による解雇だから、会社が解雇を実施できる条件は、厳格であるべきだと考えられているの。これまでの判例の蓄積によって、「整理解雇の4要件」が、社会的に了解されているわ。

整理解雇の4要件?

ええ。法律に定められているわけではないのだけれど、会社が整理解雇を行うためには、「人員整理の必要性」「解雇回避の努力」「対象者選定における公平性」「解雇手続の妥当性」が求められると考えられているわ。これらの要件を満たさない整理解雇は、裁判などで無効と判断されるおそれがあるのよ。

四つも要件があるんですね。

十分な経営努力をしないまま、安易な人員削減に走ることに歯止めをかけられているのね。

なるほど。そうだったんですね。

会社の一方的な意思で労働契約を終了させる解雇は、本質的に会社と労働者の利益が衝突しやすいという性質があるわ。だから解雇については、法律でもいろいろなルールが定められているのよ。

例えば、どんなルールがあるんですか?

一例をあげれば、労働契約法が、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めているわ。

そういえば、労働基準法にも、解雇に関するルールが定められていましたよね。

そのとおりよ。労働基準法では、差別による解雇などを禁止しているわね。例えば、性別や、国籍・信条などの差別による解雇は無効よ。そのほかにも、内部告発を理由とする解雇なども禁止されているわ。

知らなかったよ。いろいろなルールがあるんだな。労働者の立場が守られているって知って、なんだか少しほっとしたよ。

【ポイント】
1.解雇には、「普通解雇」、「懲戒解雇」、「整理解雇」の3つがある
2.整理解雇には「整理解雇の4要件」という社会的な了解がある

整理解雇の4要件
1.人員整理の必要性があるか?
2.解雇回避の努力をしたか?
3.対象者が公平に選定されたか?
4.解雇の手続は妥当であったか?

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