公正取引委員会によると、下請法違反行為に対する勧告や指導の件数が増えているそうです。
取引先のA社が、下請法違反で公正取引委員会から勧告を受けたようなんです。
まあ、それは大変な事態だわ。
企業イメージも悪化してしまって散々だと、A社の従業員がぼやいていました。大きな会社だと、下請法が関係してくるから大変ですよね。
えっ、大きな会社だと…???
近年、下請法に関する知識不足が原因で、法に違反してしまう例が増えていると言われているわ。足尾さんも勉強が必要なようね。
あっ、えり先輩!
下請法は、正式には、「下請代金支払遅延等防止法」というのよ。その名のとおり、代金の支払遅延などを防止することで、下請事業者に対する取引を公正なものとし、下請事業者の利益を守るための法律よ。
弱い立場におかれがちな下請事業者を保護するために、下請法があるんですよね。どんな取引でも、下請法が適用されるんですか?
いいえ。すべての取引が、下請法の規制を受けるわけではないわ。下請法の規制を受ける下請取引にあたるかどうかについては、「取引当事者間の資本金の額」と「取引の内容」という二つの側面から、確認をすることが必要なの。
資本金の額というのは、どんな確認が必要なんですか?
下請法では、次のように、発注する事業者(親事業者)の資本金の額に応じて、規制がされているわ。自社と相手先の資本金の額を把握することが第一歩ね。
1)資本金3億円を超える事業者が、資本金3億円以下の事業者に対して委託する場合
2)資本金5千万円を超える事業者が、資本金5千万円以下の事業者に対して委託する場合
3)資本金1千万円を超える事業者が、資本金1千万円以下の事業者に対して委託する場合
資本金が1千万円を超えていると、自社が下請事業者になる場合だけでなく、自社が親事業者になる場合がありうるんですね。
そういうことよ。注意が必要なポイントのひとつだわ。
取引の内容については、どんな確認をしたらいいんですか?
下請法では、委託される内容によって条件が定められているわ。かつては、物品の「製造委託」と「修理委託」だけが規制の対象となっていたの。2003年に下請法の大改正があって、現在は「情報成果物作成委託」と「役務提供委託」も、規制対象とされているわ。
製造業だけでなく、非製造業やサービス業も規制の対象となるんですね。
そのとおり。最近では、卸売業者や小売業者によるプライベートブランド商品の製造委託について、下請法違反となる行為が目立っているようね。
どういうことですか?
最近、プライベートブランド商品をよく見かけるようになりましたよね。卸売業者や小売業者などの販売業者が、独自に企画したり開発したりしている商品ですよね。
ええ。販売業者のブランドで売られているわよね。小売業などの販売業者の場合、自社で製造することなく、他社から仕入れた商品を販売している限りは、下請法の対象とはならないわ。
「取引の内容」として、下請法の対象となる委託をしていないということですね。
そうよ。でも、販売業者が自社のプライベートブランド商品について、その製造を他の事業者に委託すると、製造委託として下請法の規制対象となることがあるの。
販売業者であっても他社に製造委託を行えば、親事業者としての資本金の額に相当する場合、下請法の規制を受けるということですね。
そうなの。業界において昔から慣行とされている行為が、下請法違反にあたることを知らずに、法律違反をしてしまうケースも実際に発生しているようよ。
会社や従業員の知識や意識の不足が、違反を招いてしまうなんて、怖いですね。
そうね。実務においては、まずは通常の取引と下請取引を混在させないことが、法を順守するうえでもとても重要なポイントよ。会計システムで資本金区分の識別処理を実施したり、支払条件の統一を図ったりといった工夫も求められるわね。
そういえば、毎年11月は公正取引委員会が「下請取引適正化推進月間」としていましたよね。
下請法の確認をするうえでとてもいい機会ね。公正で適切な下請取引を実現するために、企業が研修や教育を実施することはもちろん、従業員一人ひとりが意識を高めることが大切ね。
◆下請法は、代金の支払遅延などを防止することで、下請事業者に対する取引を公正なものとし、下請事業者の利益を守るための法律である。
◆下請法の規制を受ける下請取引にあたるかについては、「取引当事者間の資本金の額」と「取引の内容」という二つの側面から、確認をすることが必要である。
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