お昼休みに、新聞記事を読んでいる足尾さん。なにか疑問を感じたようです。
へえ、なるほどねえ…。でもどうして逮捕されちゃったんだろう?
足尾さん、どうしたの?
市立病院の医師が、お世話になった御礼として患者さんから現金を受け取って、逮捕されたそうなんです。
まあ、収賄事件ね。
収賄事件??
その医師は、公務員として収賄罪の適用を受けたのね。
あっ、えり先輩!
収賄罪とは、公務員が、その職務に関して賄賂を受け取ったり、賄賂の要求・約束をしたりすることで、刑法で処罰の対象とされているのよ。国や地方公共団体の職員はもちろん、その他公務に従事する議員、委員その他の職員も、収賄罪の規制をうける「公務員」にあたるわ。
国家公務員と地方公務員だけではないんですね。
そうね。衆・参両議院の国会議員、県や市町村の地方議会の議員、司法試験委員会や各種審議会の委員のように法令により一定の公務を委任された非常勤の者、それから法令により国または地方公共団体の機関として公務に従事する者も含んでいるわ。
県立病院や市立病院などの公立病院で雇われている医師も、公務に従事していますよね。
そのとおりね。ところで、収賄罪には「単純収賄罪」や「受託収賄罪」など、7つの種類があるのよ。
そんなにあるんですか?
たしか収賄罪は、公務員が職務に関して、賄賂を受け取ったり、要求したり約束したりした時点で成立するんでしたよね?
そのとおり。賄賂を受け取ったり要求したり約束したりしただけで、収賄罪は成立するの。これを「単純収賄」というわ。そして、賄賂を受け取った見返りとして、相手になんらかの便宜を図ることを依頼されてそれを承諾すると、「受託収賄」になるわ。
へえ~。ところで、これから公務員になろうとする人は収賄とは関係ないですよね?
いいえ。「事前収賄」の対象になるわ。公務員になろうとする者が、担当すべき職務に関し、特定の行為を依頼されてそれを承諾したうえで賄賂を受け取ったり、要求・約束をする罪のことよ。
これから公務員になろうとする者って?
たとえば、選挙の立候補者などが該当するわね。ただし、現に「公務員となった場合」でなければ罰せられないわ。
なるほど。
それから、第三者に自分がもらうはずだった賄賂を受け取らせて、一定の行為をすることを依頼されて、これを承諾したとしたら、どう?
限りなく黒に近いグレーな気がします。
これは、「第三者供賄」という罪になるわ。
やっぱり。
それから、賄賂を受け取っただけで、収賄罪が成立するという話をしたけど、受け取ったうえで、不正な行為をした場合はどうなると思う?
罪が重そうですね。
そのとおりよ。この場合、「加重収賄」という罪になるわ。それに、職務上、不正な行為をしたことに関して賄賂を受け取ることも、同様に罪になるわ。
わかりました。
それから、さっき、これから公務員になろうとする人も収賄罪の対象になるという話をしたけど、「公務員だった者」はどうだと思う?
もう関係なさそうな気がしますけど…。
たとえば、「在職中」に依頼されて不正な職務行為をし、「退職後」に、賄賂の収受・要求・約束をしたら「事後収賄」という罪になるわ。
事後も罪になるんですね。
他にも、公務員が、依頼されて、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、あっせん(仲介)したり、その報酬として、賄賂を収受したり賄賂の要求・約束をする場合も、「あっせん収賄」といって、罪になるわ。
収賄にもいろいろあるんですね。
そして、注意してほしいのは、たとえば郵便局やJRの職員など、いわゆる「みなし公務員」も、賄賂罪の規制の対象とされていることよ。
ひとことで公務員といっても、その対象は広いんですね。
さらに、外国の公務員に対する賄賂については、不正競争防止法で禁止されているわ。
外国の公務員も含まれるのか…。賄賂は贈らない!受け取らない!ですね。
◆収賄罪の対象の「公務員」には、国・地方公共団体の職員だけではなく、その他公務に従事する議員、委員その他の職員も含まれる。みなし公務員に対しても、賄賂罪が適用される
◆収賄には、単純収賄、受託収賄、事前収賄、第三者供賄罪、加重収賄、事後収賄、あっせん収賄がある
◆外国の公務員に対する賄賂については、不正競争防止法で禁止されている
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