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2012/11/27号

~株取引、その名義は関係ない?~の巻

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昼休みにスマートフォンで株価を見ていた足尾さん。なにやら疑問があるようです。

株取引を妻の名義でしていて、インサイダー取引で逮捕されたっていう事件がありましたよね?

ええ。公表前の重要情報を知った会社の株を、妻の名義で買い付けていたっていう話ですよね?

あれって、妻の名義だったからダメなんですかね? 友人の名義だったらいいのかな。

え? そういう話ではない気がしますけど…。

足尾さん、もしかして、よからぬことをたくらんでない?

い、いえ。取引の名義とインサイダー取引について、ちょっと疑問に思っただけです。

それならいいけど。じゃあ、まずは、どういう人がインサイダー取引の規制の対象になるのか、簡単におさらいしましょうか?

お願いします!

インサイダー取引とは、「会社の内部情報に接する立場にある社員や役員等が、会社の重要な情報を職務に関して知り、その情報が公表される前にその会社の株を売買すること」というのは知っているわよね?

はい。

だから、その会社の株価に重要な影響を与える未公表の事実を職務に関して知った、その会社の役員や従業員などの「会社関係者」は、インサイダー取引の規制の対象になるわ。

まさに「会社の内部情報に接する立場にある人」ですもんね。

この会社関係者には、その会社で働くアルバイト従業員や派遣社員も含まれるんですよね?

そうよ。それに、帳簿を見ることができる主要株主や、契約している顧問弁護士、その会社に許認可を与える権限をもっている公務員なども含まれるのよ。

「会社の内部情報に接する立場にある人」って、範囲が広いんですね。

会社関係者でなくなってから1年以内の人も、規制の対象に含まれるんですよね?

そのとおりよ。それに、会社関係者から未公表の重要事実を聞いた人も、「第一次情報受領者」として、会社関係者と同様に、インサイダー取引の規制の対象になるわ。

家族や友人に、世間話だと思ってうっかり会社の情報を話してしまうと、インサイダー取引を誘発することにもなりかねないっていうことですね。

僕、家族や友人に、うっかり会社の重要な話をしてしまわないように気をつけます!

それから、足尾さんが疑問に思っていた、取引の名義の話だけど、会社関係者や第一次情報受領者は、家族や友人の名義で売買したとしても、本人の計算で行われたもの、つまり損益が本人に帰属するものであれば、本人の取引として扱われて、インサイダー取引の規制の対象になるのよ。

えっ? 誰の名義かは関係ないっていうことですか?

そうよ。実際に、他人の名義を用いてインサイダー取引を行っていた事例が多数摘発されているのよ。

取引の名義を他人のものにしても、規制から逃れることはできないっていうことですね。

そのとおりよ。だから、変な考えは絶対に起こしちゃダメよ。

わかりました!

◆その会社の株価に重要な影響を与える未公表の事実を職務に関して知った「会社関係者」と、その人から話を聞いた「第一次情報受領者」は、インサイダー取引の規制の対象となる。
◆「会社関係者」や「第一次情報受領者」が自らの計算で行う株取引は、家族・知人・その他名義を問わず、インサイダー取引の規制の対象となる。

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