取引先から帰ってきてから、落ち着かないようすの足尾さん。なにかあったのでしょうか?
足尾さん、どうかしたんですか?
取引先のA社の社員が就業規則に違反して懲戒処分になったっていう話を小耳にはさんだんです。それで、ちょっと不安になって。
え?
僕、就業規則の内容って細かく気にしたことがなかったから、知らずに違反してしまわないか、急に心配になっちゃって。
足尾さん、それは問題ね。
あっ、えり先輩!
就業規則というのは、私たちが会社で働くうえで大切なルールを文書化した、会社と従業員の間のルールブックなのよ。気にしておかなくてはダメよ。
あの~、どんな内容が書いてあるんでしたっけ?
勤務時間や休日・休暇、賃金などの基本的な労働条件や、従業員が勤務するうえで守るべき服務規律などよ。
服務規律?
企業秩序を維持するために、従業員が守るべきルールを定めたものよ。
具体的にはどんなことが書かれているんですか?
会社の設備・備品の私的な利用や、会社の名誉や信用を損なう行為、セクハラ行為の禁止などね。職場での服装などのルールについて書かれていることもあるわ。機密情報の漏えいを禁止している場合も多いわね。
会社によってさまざまですよね。足尾さんが気にしている、懲戒処分についても定めていますよね。
懲戒処分! それが気になっていたんです。やっぱり怖い…。
足尾さん、それは違うわ。就業規則は、従業員のためのものなのよ。
え?
就業規則は、会社が勝手にルールを定めるものではなくて、法律の定めに従って、従業員の意見を聞いたうえで内容を決めるものなの。10人以上の労働者がいる事業場では必ず作成するよう義務づけられているのよ。
従業員が安心して働ける職場を作るためには、あらかじめ労働時間や賃金、服務規律など、従業員の労働条件や待遇の基準を明確に定めておかなきゃいけませんものね。
そうか、労使間のトラブルを回避するためのものなのか…。しっかり読んでおかなきゃいけなかったんだ!
そのとおりよ。それに、就業規則は従業員ならいつでも見ることができるはずよ。
いつでも、ですか?
会社には、就業規則の内容を従業員に周知する義務があるの。従業員一人ひとりに配付したり、社内のイントラネットに掲載するなどの方法でね。
うちの会社では、社内のイントラネットに掲載していますよね。
実はね、就業規則は、従業員に周知された日から効力をもつとされているの。従業員に周知されていれば、従業員が内容を熟知しているかどうか、明確に同意しているかどうかに関係なく、法令や労働協約に矛盾抵触しない範囲であれば、適用されるのよ。
えぇっ!? 内容を熟知しているかどうかは関係ないんですね。
そうよ。知らないで違反したんだから許される、という話ではないのよ。
僕、今からすぐに就業規則の内容を確認します~!
◆就業規則は、勤務時間、休日・休暇、賃金などの労働条件や、従業員が勤務するうえで守るべき規律などを定めたものである。
◆会社には、就業規則の内容を従業員に周知する義務がある。
◆就業規則は、従業員がその内容を熟知しているか否か、明確に同意したか否かを問わず、法令や労働協約に矛盾抵触しない範囲であれば、適用される。
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