昼休み。足尾さんが携帯に届いた友人からのメールを見て、何やら嬉しそうにしています。
足尾さん、どうかしたんですか?
以前、僕の先輩が仕事で発明をして、特許を取ったっていう話をしたでしょ。
ええ。足尾さんの先輩が、職務発明されたんでしたよね。
今、友人からのメールで知ったんだけど、その先輩が開発した新商品が、またしてもヒットしているみたいなんだ。
すごいですね! また特許を取れるんじゃないですか?
特許は発売前に取っているんじゃないかな。もし取っていないなら、残念なことになっちゃうよ。特許の取得には「新規性」が必要なんだけど、商品を販売すると、その発明は公開されたことになって、その「新規性」を失っちゃうはずだから。
へ~! 足尾さん、なんだか詳しいですね。
えへん! 以前、先輩が特許を取ったときに勉強したんだ。学会発表で公開した場合なんかは例外として新規性を失わないはずだけど、販売は対象外だったはず…。
ちょっと、待って。
えっ?
平成24年4月施行の改正特許法により、発売された後でも特許を取得することができるようになったのよ。
そうなんですか?
足尾さんのいうとおり、改正前は、試験の実施、刊行物への発表、電気通信回線を通じての発表、指定された学会での発表、特定の博覧会での展示によって公開された場合のみ、例外として発明の新規性を喪失せず、特許を取得できるとされていたわ。
そこまでは勉強しました!
でも、それだけでは、公開方法の多様化に対応できない、インターネットを通じて公開された発明は対象なのに、テレビで発表された発明は対象外という不均衡などの問題があったの。それで、改正特許法では、発明者等の行為に起因して新規性を喪失する場合は、網羅的に対象となるように規定が見直されたの。
それで販売も対象になったんですね。
そうよ。集会での公開も対象になり、テレビ・ラジオ等で公開された発明、販売により公開された発明も、新規性喪失の例外規定の適用対象になったのよ。
ところで、そもそもどうして例外規定を設けているんですか?
出願より前に公開された発明は特許を受けることができない、というのが原則だけど、自分の発明を論文発表等で公開した後などに特許を出願しても一切受けつけないのは、産業の発達に寄与するという特許法の趣旨を考えるとそぐわないし、発明者にとって酷な場合もあるでしょ。
確かにそうですね。
例外規定の適用対象の場合は、公開された後、いつでも特許出願できるんですか?
発明の公開日から6カ月以内に出願する必要があるわ。
6カ月以内か! 急いで先輩に教えなきゃ。
ただし、この規定はあくまでも例外規定で、原則は公開前の出願だからね~。ちょっと~、足尾く~ん。…行っちゃったわ。
足尾さんの場合、話は最後まで聞くっていう原則をまずは教えないとですね。
本当にそうね(苦笑)。
◆特許出願より前に公開された発明は原則として特許を取得することはできない
◆ただし、発明者等が自ら、試験の実施、刊行物・集会・ラジオ・テレビでの発表、販売などにより発明を公開した場合は、公開日から6カ月以内に出願をすれば、発明の新規性喪失の例外規定が適用される
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