リコール情報が相次いで出され、消費者トラブルも後を絶たないなか、消費者を取り巻く制度は今、どうなっているのでしょうか…?
消費者庁ができて、もうすぐ4年ですね。
もうそんなに経つのね。
消費者の立場を最優先する国の行政機関が初めてできた、画期的なできごとでしたよね。
そうなんだ~。
そうなんだって、足尾さん…。
あらあら。あらためて、消費者を取り巻く制度がどう変化してきたのか、確認したほうがよさそうね。
えり先輩! お願いします!
2009年に消費者庁が発足する前は、消費者トラブルがおこっても相談先がわからない、関係省庁間の連携ができていなくて被害情報が共有されない、といった問題があったの。
それらの対応を一元的に担うために、消費者庁ができたんですよね。
そうよ。「消費者の権利を尊重し、自立を支援する」という基本理念にのっとり、消費者が主役となる社会を実現するために活動しているわ。
えっ? 消費者の保護じゃなくて、権利ですか?
2004年に消費者保護基本法が改正されて消費者基本法になり、「保護」ではなくて、「権利の尊重」「自立の支援」に目的が変わったのよ。
消費者の権利ってどんなものですか?
「安全の確保」「選択の機会の確保」「必要な情報の提供」「教育の機会の提供」「意見の政策への反映」「被害の救済」などよ。
なるほど~。
消費者基本法では、これらの権利を尊重するために、国、地方公共団体、事業者、消費者それぞれの役割を定めているのよ。
消費者にも役割があるんですか?
ええ。消費者の権利を活用しながら、自立した市民として自主的・合理的に行動するように努めることよ。
僕たち消費者にも、なんだか大変な役割が与えられているんですね…。
もちろん、消費者だけが努力しなくちゃいけないわけではないのよ。事業者は、消費者の知識に配慮して、公正な取引、必要な情報提供、苦情処理の体制を整備することなどが求められているわ。
国も、「消費者基本計画」を策定して環境整備を進めているんですよね。
そうね。「押し買い」を規制するための法改正や、生命・身体の被害にかかわる事故調査機関の整備等がなされてきたわ。
それで、消費者トラブルは減っているんですか?
残念ながら、消費生活センター等に寄せられる相談は若干減ってきたけど、いまだに年間約90万件という高水準のままなの。
ニュースなどを見ていると、高齢者の消費者トラブルは増えている印象がありますよね。
そのとおりよ。訪問販売や電話勧誘による消費者トラブルは年々増加しているわ。
リコールもたくさん出ていますよね。
ええ。消費者庁へ通知された、生命・身体にかかわる消費者事故等の件数も、年間1000件を超える高水準で横ばい傾向なのよ。
年間1000件も! 消費者が安心できる状況にはなっていないんですね。
そうね。消費者基本法では、事業者に対して、供給する商品やサービスの品質を向上させ、自らが順守すべき基準を作成することなどで、消費者の信頼を確保するよう努めることが求められているわ。
消費者の生命・身体に対する危害の発生や拡大を防止するために、消費生活用製品安全法で重大製品事故情報の収集と公表などについて定められていますよね。
ええ。経年劣化による事故を防止する制度として、「長期使用製品安全点検制度」もあるわね。
製品の欠陥によって死傷事故や火災などがあった場合、メーカーが損害賠償責任を負うことも、製造物責任法で定められていますよね。
消費者団体が多数の消費者の権利のために訴えを起こす「消費者団体訴訟制度」も創設されましたよね。
いろんな制度や法律で、消費者の信頼の確保や自立の支援を後押ししているんですね。
そうね。事業者は、消費者事故やトラブルをなくすために、確かな品質の商品を開発すること。そして、万が一、リコールということになれば、最後の一つまで責任をもって回収する姿勢が求められるわね。
それぞれの役割をきっちり果たすのが大切っていうことですね!
◆消費者庁は、「消費者の権利を尊重し、自立を支援する」という基本理念にのっとり、消費者が主役となる社会を実現するための機関である
◆消費生活における、消費者の信頼の確保や権利の尊重、自立支援のために、多数の制度や法律が定められている
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