筋野さんが契約書とにらめっこしています。どうしたのでしょうか??
うーん…。
筋野さん、さっきから契約書とにらめっこして、どうしたんですか?
それがさあ、契約相手から、念のため、捨て印を押してくださいって言われたんだけど、捨て印ってなんだっけ? どこに押すんだっけ?
「捨て」印というぐらいですから、あんまり意味はないと思いますけど…。書面の欄外に適当に押しておけばいいんじゃないですか?
なるほどね。「ポン」っとね。
お二人さーん。わたしのこの福耳が「聞き逃しちゃならぬ」と言っているんだけど。
うげっ!?
意味も知らずに捨て印をポンポン押すのは、どうかと思うわ。
ハ、ハイ…。
まず、捨て印とは何か説明するわね。捨て印とは、契約書の提出後に、間違いに気づいて訂正が必要になったときに、いちいち訂正印を押しに行くのは手間…ということで、あらかじめ欄外に押しておき、「ある程度は訂正していいですよ」と認める印のことなの。契約書の署名に押した印と同じものを使うのよ。
え? そんな意味があったんですか!
そうよ。訂正する場合は、該当箇所に二重線を引いて、訂正する文字を付記するだけでよい、とされているわ。
わかりました。 ん? …ってことは、契約書を勝手に変えられても文句は言えないってことですか!?
捨て印が押してあるからと言って、なんでも訂正していいというわけではなくて、誤字・脱字・書き損じぐらいの常識的な範囲だと解釈されているけど、法的に、訂正のボーダーラインが、決まっているわけではないの。
そうなんですか?
だから、トラブルになることもあるのよ。意味もわからずに押すなんてもってのほかよ! まずは、できる限り完璧な契約書を作成することが第一ね。
ハイ…(しょぼん)。
そのたびに訂正印を押すに越したことはないわけですね。トラブルを防ぐために、契約書をお互いに一部ずつ持っておくことも重要ですよね。
あの~、ついでに聞いておきたいんですが、契約書を二枚くっつけて、またがるように押すハンコありますよね? あれってなんですか?
それは、契印ね。契約書の枚数が二枚以上になる場合に、一つの契約書であることを証明し、落丁や抜き差しを防止するために、契約者全員の印を押すの。ホッチキスどめの場合はページの境目の部分をまたぐように、袋とじの場合は表か裏どちらか、帯と表紙の間に押すのよ。
これも、契約書の署名に使ったものと同じ印を使うんですよね。
割印っていうのもよく聞きますけど、どう違うんですか?
割印は、契約書を複数作成したときに、それらが同じものや関連しているものであることを証明するために、契約書を重ねて、少しずらして押印するものね。
収入印紙に押印する、消印というのもありますよね。
収入印紙の再使用を防止するために、印紙と契約書にまたがって押す印のことね。これは、契約書の署名と同じ印でなくてもいいのよ。契約者全員の印はいらないし、サインでも構わないの。郵便切手やはがきに押される印も同じ目的なのよ。
なるほど~。いろいろありすぎて、混乱しますね。
確かに種類は多いけど、意味や目的がわかれば、複雑なものではないはずよ。
今日は勉強になったなー。今日から俺のこと、ハンコマスターって呼んでくれよなっ♪
(こういう人が一番アブナイ…)
◆契約書に押す印は、いろいろな種類があるが、それぞれの意味を理解したうえで押印する必要がある
◇捨て印:
あらかじめ欄外に押しておき、後である程度は訂正していいと認める印
◇契印 :
契約書が二枚以上になる場合に、一つの契約書であることを証明するために押す印
◇割印 :
契約書を複数作成したときに、それらが同じものであることを証明するために、契約書を重ねて少しずらして押す印
◇消印 :
収入印紙の再使用防止のために、印紙と契約書にまたがって押す印
<< 一覧へ戻る