第一法規株式会社|教育研修一覧

2013/10/22号

~贈賄禁止は、世界の潮流~の巻

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初の海外進出。いったい、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。

わが社も、海外進出を検討しているみたいだぞ。

本当ですか?

国によっては、その国で仕事をするためには政府高官への根回しが必要だったりするらしいから、なかなか大変そうだよな。

え? それって、いわゆる「賄賂」ってことですか?

おい、声が大きいぞ。シー!

今、「国によっては、賄賂が必要」って話してた気がするんだけど。

あっ、えり先輩!

あなたたち、もしかして、国内ではやってはいけないことを、外国なら許されると思っていたりしないわよね?

そ、そんなことありません。

二人は、経済協力開発機構による「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」という国際条約があるのを知ってる?

聞いたことがあるような…。

この条約では、外国公務員に対して金銭などの不当な利益を供与することを、締約国の国内法で犯罪と規定することを求めているの。

日本も参加しているんですか?

ええ。「不正競争防止法」って、聞いたことあるでしょ?

はい。営業秘密を保護する法律ですよね?

不正競争防止法には二つの柱があるの。一つ目は、事業者間の公正な競争を図ることよ。営業秘密の保護や、他人の商品形態を模倣する商品の提供の禁止などについて定めているわ。

もう一つの柱はなんですか?

もう一つの柱は、事業者間の公正な競争に関する国際約束の的確な実施を確保するための措置を講じることよ。

なるほど。それで、不正競争防止法で、外国公務員等に対する不正な利益の供与等を禁止しているんですね。

他の国ではどうなっているんですか?

アメリカでは、贈収賄に関する法律で、海外腐敗行為防止法(FCPA)という法律があるわ。外国企業であっても、外国公務員への贈賄をアメリカの領域内で行った場合には、この法律が適用されるのよ。

アメリカの領域内…。

たとえば、アメリカを経由して贈賄行為に関連した電子メールの送受信を行ったら、アメリカ領域内で贈賄行為の一部が行われたものとして扱われるわ。

えっ、メールを送受信しただけで!

罰則もあるんですか?

100億円を超す制裁金を科されたりするケースも増えているのよ。

すごい額だな。気を付けないと。

それから、イギリスの贈収賄防止法は、公務員に対する贈賄だけでなく、民間人に対する贈賄も適用対象に加えるなど、アメリカのFCPAより規制対象を拡大しているのよ。

民間人も対象になるんですね。

この法律には、企業が関係者による贈賄を防止しなかったこと自体を犯罪とする規定が設けられているの。イギリスに進出する企業は、コンプライアンス体制の再構築が求められるわね。

海外への進出に際しては、贈賄トラブルに巻き込まれないように、しっかり体制を整える必要があるっていうことですね。

贈収賄だけじゃなくて、公務員等による横領や、犯罪収益を正当な収益に見せかける行為なども問題になっているのよ。

悪代官は、日本の時代劇だけではなくて、世界各国にいるんですね。

このような、国際的な現象となっている公務員等に係る腐敗行為に対処するために、腐敗行為の防止措置、腐敗行為を犯罪とすること、締約国間で国際協力をすること、財産の回復などについて定めた国連の条約があって、日本のほか、多くの国が署名しているのよ。

贈賄禁止、腐敗行為への対応は、世界的な潮流なんですね。


◇外国公務員への贈賄を防止するために、経済協力開発機構による「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」という国際条約がある
◇日本では、不正競争防止法で、外国公務員等に対する不正の利益の供与等が禁止されている
◇アメリカのFCPA、イギリスの贈収賄防止法などもあり、贈賄禁止は世界の潮流となっている
◇国連総会において「腐敗の防止に関する国際連合条約」が採択され、日本も署名している

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