年次有給休暇の積極的消化を推進する企業もある一方、休暇を取れるような雰囲気ではない…なんて職場も。そもそも有休ってなんなの?
ぼくの友達の会社の話なのですが、有休を取ると査定に響くのではないかと心配で、取りづらいって嘆いてました。
そうそう、ボーナスが減らされるんじゃないか心配、とか、よく聞く話だよな。
それは問題だわ!!
あ、えり先輩!
労働基準法で、有休を取得した労働者に対して、賃金の減額などの不利益な取扱いをしてはならないと定められているのよ。有休を取ったことで査定やボーナスに影響があるのは、不利益な取扱いにあたるから問題よ。
友達の話によると、有休は、病気とかやむを得ない理由でなければ取れない雰囲気らしいんです。実は、僕も特別な理由もなく有休を取ることに、なんとなく罪悪感があります。
そうなのね。じゃあ、改めて有休とは何か、確認しておきましょうか。
お願いします!
年次有給休暇は、心身のリフレッシュや自己啓発などを図れるように、賃金の支払いを受けながら休暇を取ることを認めた制度で、労働基準法で保障されている労働者の権利なのよ。慶弔、病気に限らず、どんな理由で休んでもいいのよ。
でも、有休を取るって言うと、部長から理由を聞かれたりするし、ただの遊びではなんとなく取っちゃいけない空気があるんですけど。
そんなことないのよ。年次休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由なのよ。だから、休む理由を説明する必要はないのよ。
そうですか。答える必要はなかったんですね!
ただ、使用者が、労働者が申請した有休取得の時季の変更を命じる必要があるときに、社会通念上、時季変更を差し控えた方がよい理由、たとえば、慶弔、病気などがないかを確認する意味で、そうした事情がないか尋ねることはあってもいいと思うわ。
時季の変更を命じる必要があるときって、どういうことですか? 実は、この前、有休を申請したら、部長から、「その日はやめてほしい」って言われてしまって…。
有休を許可したら事業の正常な運営が妨げられる場合は、使用者が別の日にするように変更を命じることができるの。これを時季変更権と言うわ。
じゃあ、業務が忙しい部署は、有休が取りづらいですね。
ただし、日常的に業務が忙しいことや慢性的に人手が足りないという理由だけで、時季変更権を使えるわけではないのよ。
そうなんですか?
事業の内容、規模、労働者の担当業務の内容、業務の繁閑、予定された年休の日数、他の労働者の休暇との調整など諸般の事情を総合判断する必要があるのよ。それに、使用者は、労働者が申請した時季に年休が取れるように状況に応じた配慮をすることが求められるのよ。
いつも時季変更を命じられるわけではないんですね。安心しました。
ちなみに、僕の友人は今の会社に入社して1年しか経っていないんですけど、有休は普通に取れるんですか?
雇入れの日から6か月間継続して勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤した労働者であれば付与されるわ。短時間労働者やパートタイマーでも有休は取れるのよ。ただし、権利が発生した日から2年以内に使わないと、時効により消滅してしまうわ。
なるほどー。早速、友人に伝えます!!
有休が取りづらい状況が年中続いているような職場は、労働環境がよいとは言えないし、管理側に問題があると言わざるを得ないわね。優秀な社員が離れていく原因にもなりかねないわ。
よ~し! みんなの模範になるように、率先して有休を取ることにします!
そういうところだけは頼もしいのね(笑)。
◆年次有給休暇とは、心身のリフレッシュや自己啓発などを図れるように、賃金の支払を受けながら休暇を取ることを認めた制度である
◆年次有給休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である
◆時季変更権とは、申請通りに有休を許可したら事業の正常な運営が妨げられる場合、使用者が別の日にするよう変更を命じることができる権利である
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