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2014/06/10号

~障害者権利条約、日本も締約国に~の巻

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久しぶりに、えり、みち、よっしーの三人で盛り上がっています。何を話しているのでしょうか…?

障害者権利条約、日本も締結しましたね。

2007年に署名してから締結までけっこう時間がかかりましたね。

締結に先立ち、障害当事者の意見も聞きながら、国内の法令の整備を進めていたからなのよ。

国内の法令、ですか?

障害者総合支援法と障害者差別解消法が制定され、障害者基本法と障害者雇用促進法が改正されたのよ。

締結に向けて、障害者のための法制度が一気に整備されたんですね。

障害者権利条約は、障害者の人権や基本的自由の享有の確保、固有の尊厳の尊重を促進することを目的としていて、障害に基づくあらゆる差別を禁止しているのよ。

締約国は、すべての個人、団体、民間企業による、障害に基づく差別を撤廃するためのあらゆる措置をとることが求められるんですよね。

そのとおりよ。

でも、差別の禁止って、ずいぶん前から言われていることですよね。

この条約では、障害者であることを理由とする直接的な差別だけでなく、障害者の権利の確保のための「合理的配慮」をしないことも、「差別」に含まれるとしているのよ。

合理的配慮、ですか?

ええ。過度な負担ではないにもかかわらず、障害者の権利の確保のために必要・適当な調整を行わないと、合理的配慮をしなかったということになるのよ。

具体的にはどういう場合ですか?

たとえば、「過度な負担ではないにもかかわらず、段差がある場所に車いす用のスロープを設置しない」などよ。

なるほど。

締約国は、障害者が、他の人と平等に地域社会で生活する権利を享受し、地域社会に受け入れられ、参加することを容易にするための措置をとることも求められるわ。

住みたい場所に住み、受けたい教育を受け、地域社会におけるサービスを利用できるようにするっていうことですよね。

条約の内容が実施されているかを監視する機関を国内に設置することも求められているの。日本でも、「障害者政策委員会」が新たに設置されたわ。

取組みが進んでいるかのモニタリングが実施されるんですね。

条約に基づく義務が履行されているかを定期的に国連へ報告する必要もあるのよ。

これからは、企業にもさまざまな対応が求められますね。

そうね。締結に先立って改正された障害者雇用促進法により、募集、採用、雇用の継続、昇進など、雇用に係る全ての事項に関して、障害を理由とする差別的取扱いが禁止されたのよ。

車いすを利用する人にあわせて机や作業台の高さを調整するなど、障害者が職場で働くにあたっての支障を改善するための措置も義務化されましたよね。

それから、障害者差別解消法により、従業員はもちろん顧客に対しても、障害を理由とした不当な差別的取扱いが禁止されたわ。たとえば、車いすの人や盲導犬を連れた人の入店を、正当な理由もなく、やむをえない事情もないのに拒否するなどね。

あらゆる分野で、障害者の権利を実現するための取組みが進みそうですね。

今日はとても勉強になりました! ありがとうございます。

どういたしまして。これからも引き続き情報を収集していくわね。

【障害者権利条約とは】
◆ 障害者の人権や基本的自由の享有を確保すること、固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする国際条約である
◆ 締約国は、条約に基づき、障害者の権利を実現するための措置を実施することが求められる
◆ 日本では、条約締結に先立ち、障害者のための国内の法制度の整備が進められた
◆ 2014年1月20日、日本も締約国となり、今後は、条約の内容が実施されているかの監視と、国連への報告が実施される

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