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2014/07/23号

~精神障害で労災認定~の巻

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大麦さんが、メンタルヘルスに関する資料を人事部からもらってきたようです。

うつ病による労災の認定件数が増えていて、びっくりしました。

(資料を見ながら)ほんとに年々増えていますね。

労災認定といえば、以前、足尾さんが通勤途中にケガをしたことがありましたよね。

そうそう。飲み会の後だったから、労災の対象外だったんだけどね。

あのときはケガでしたけど、うつ病の場合は、どうやって労災認定するんでしょう?

確か、説明している資料があった気がするんだけど…(ゴソゴソ)。

その疑問、ずばりお答えするわ。

えり先輩! 助かります!

発病した精神障害が業務に起因するものであるかは、厚生労働省が定めた「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づいて判断されるの。

どうやって判断されるんですか?

「心理的負荷評価表」を用いて行われることになっているわ。職場もしくはプライベートで起こり得る、精神障害に結びつくようなストレスを与える出来事について、それぞれの心理的負荷の強度を「強」「中」「弱」の三段階で示して、それに基づいて、その人の心理的負荷がどの程度だったか評価するの。

心理的負荷が「強」って、どんな出来事なんですか?

「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをし、事後対応にも当たった」「退職を強要された」「ひどい嫌がらせ、いじめ、暴行を受けた」などね。

ひえ~っ。そんな目に遭ったら、たまりませんね。

「いじめ、暴行」とまではいかなくても、同僚と仕事で衝突したり、慣れない部署に配置転換されたりするのも、かなりのストレスになりますよね。

そうね。「同僚とのトラブルがあった」、「配置転換があった」、「達成困難なノルマが課された」などは、心理的負荷が「中」と評価されるのよ。それから、「勤務形態に変化があった」「仕事のペース、活動の変化があった」「上司が替わった」などは「弱」と評価されるわ。

達成困難なノルマを課されたら、長時間労働するしかなくなりますよね。

長時間労働も精神障害を発病する原因になるわ。特に発病直前の1ヶ月におおむね160時間を超えるような時間外労働は、極度の長時間労働として、心理的負荷が「強」と判断されるのよ。

160時間の残業なんて、寝る時間もないですね。

「強」と評価されたら、必ず労災認定されるんですか?

いいえ。職場における心理的負荷が「強」と評価されるのが労災認定の要件だけど、私生活でも強いストレスを受けていたり、既往症やアルコール依存症などが関係している場合は、業務以外の原因によるものではないか、医学的に慎重に判断されることになるわ。

業務以外の原因ってどんなものですか?

たとえば、「多額の財産を損失した又は突然大きな支出があった」場合は「強」、「隣近所とのトラブルがあった」場合は「中」、「夫婦のトラブル、不和があった」場合は「弱」と評価されるわ。

ご近所とのトラブルか…。それもツラそうだなあ。

ところで、ストレスを感じる出来事が複数ある場合はどうなるんですか?

複数の出来事が関連して生じた場合は、全体を一つの出来事として評価するの。関連していない場合は、出来事の数や内容、時間的な近さを考慮して評価するわ。発病前おおむね6ヶ月の間に起きた業務による出来事について評価して、「強」と評価された場合、労災の対象になるわ。ただし、ハラスメントなどの繰り返されるものは、始まった時点からの心理的負荷が評価されるのよ。

評価表にあげられている出来事には、ハラスメントに関連するものも多いんですか?

ええ。ハラスメントに関するものが複数あげられているわ。ハラスメントによるストレスは、みんなの心がけ次第で防止することができるから、みんなもこうした行為がなくなるように、気を付けてね。

わかりました!

僕、こう見えても、繊細なんで、ハラスメントは絶対なくなってほしいです!!

う~ん。足尾さんが繊細かどうかは別にして、ハラスメントは絶対なくさないとね。

そこは別にしないでください~。

【精神障害の労災認定のポイント】
◆労災認定は、労働基準監督署の調査に基づき認定される
◆発病した精神障害が業務によるものかどうかの判断には、職場と職場以外における「心理的負荷評価表」が用いられる
◆発病した精神障害が労災認定されるのは、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断できる場合に限る
◆仕事によるストレスが強い場合でも、同時に私生活でのストレスも強かったり、既往症などが関係している場合には、原因について医学的に慎重に判断される

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