第一法規株式会社|教育研修一覧

2014/11/11号

~マル秘じゃなければ大丈夫なの?~の巻

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たなやんは、ライバル会社のB社が急激に市場シェアを拡大していることに、強い危機感を抱いているようです。

足尾さん、のんびりしてる場合じゃないですよ! 同業のC社はB社に顧客を奪われたそうです。ボクたちも対策を考えないと。

ん~、敵を知り、己を知れば、百戦危うからず! まずはB社の情報収集だね。

ですよね! でも、どうしたらいいんだろう?

任せとけ、B社で営業をやっている知り合いが、転職したがっているらしいんだ。今度会うときヒアリングしておくよ。

えっ? それって、営業秘密の不正取得とかで、問題にならないですかね?

マル秘の書類を要求するわけじゃないから、大丈夫だって。

そうですか。それなら大丈夫ですね♪

そこの二人、そこまでよ!

あっ、えり先輩!

まったく…、中途半端な知識じゃ困るわよ。二人とも勉強し直しね。

ええ~!?

営業秘密は、マル秘のマークがついている書類に限らないのよ。マル秘のマークがついていなくても、秘密管理性、有用性、非公知性の3要件を満たしていれば、営業秘密にあたる可能性があるの。

「秘密管理性」…、つまり秘密として管理されているってことですよね。「有用性」は…、事業活動に有用な情報であること。ここまではわかるんですけど、「非公知性」ってなんでしたっけ?

保有者の管理下以外では一般に入手できない、つまり公然と知られていないことよ。

なるほど~。ところで、営業秘密といえば、設計図や製造ノウハウ、顧客名簿なんかが思い浮かぶんですけど。

そうね。営業秘密にあたる可能性があるわね。

そうか、覚えておこう…。

それから、知っているとは思うけど、他社の営業秘密を、不正に取得された情報だと知ったうえで取得・使用すると、差止めや損害賠償を請求される可能性があるのよ。一定のものについては刑事罰の対象になるわ。

教えてもらう情報が、不正に取得したものかどうか、聞かないようにすればいいんじゃないですか?

知らなければ済むわけじゃないのよ。重大な過失によって、不正に取得されたことを知らないまま、営業秘密を取得して使用・開示するのもNGなのよ。

言い逃れはできないってことか…。

営業秘密の開示を条件に転職して、転職後、その情報を実際に開示したら、図利加害目的で不正開示したことになるわ。

トリカガイモクテキ?? またよくわからない言葉が出てきました…。

不正に利益を得たり、営業秘密の保有者に損害を与える目的があった、という意味よ。図利加害目的での営業秘密の不正開示は、営業秘密の侵害罪に問われるのよ。

まさか、転職の相談って、そういう話だったりして…。

それに、その情報に個人情報が含まれていたら、個人情報保護法の問題にもつながるわ。うちの会社は、個人情報取扱事業者だから、不正な手段によって個人情報を取得したら、勧告、命令を受けることになるわ。

営業秘密の侵害罪だけでは済まないってことですね。

そうね。それに、漏えいした人は、個人情報を漏えいされた会社に対する損害賠償責任などの民事責任や、窃盗罪などの刑事責任を負う可能性があるわ。情報を漏えいされた被害者個人からも不法行為に基づく損害賠償を請求される可能性があるわね。

これから知り合いと会うときは、会社のことをしゃべらないように気を付けよう…。

そのほうがよさそうですね。

(新聞を取り出して)ところで、B社の情報収集なら、ここにあるわよ。

あっ! B社が「顧客情報を不正取得」って、書いてある。

ええ?!

二人とも、怪しい情報収集を考えるよりも、日頃から新聞やニュースをチェックしてね。

はいっ!

はいっ!!

◆営業秘密の三要件
1.秘密管理性、2.有用性、3.非公知性

◆営業秘密侵害罪に問われる行為(図利加害目的)の例
・営業秘密を、不正な方法で取得する
・不正に取得した営業秘密を、使用、開示する
・不正に開示された営業秘密だと知ったうえで、取得、使用、開示する など

◆個人情報保護法による制限
個人情報取扱事業者は不正な手段により個人情報を取得した場合、勧告、命令を受ける

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