どの会社にも達成すべき目標ってありますよね。新製品販売チームのリーダーを任された筋野さんも、目標達成のために悩んでいるようです。
う~ん、今期の売上目標を達成するの、厳しそうだな~。
確かにちょっと厳しそうですね。
部長から「今期は頼むよ、筋野リーダー!」って言われてたのに…。
でも、来期は、早々に大型受注が決まってますよね。後ちょっと早ければ、今期の売上に計上できたのに残念ですね。
そうだ! あれ、なんとか今期の売上にできないかな?
それは、ちょっとまずい気が…。
こら~っ!
あっ! えりさん!
筋野さん、虚偽の報告をあげていいと思ってるの?
きょ、虚偽って、実際に存在している受注なのに、大げさですよ~。
いいえ! 来期の売上を今期の売上と偽ることは、今期の決算をよく見せようとする、「粉飾決算」につながる行為なのよ。
ちょっと成績をよく見せたかっただけなんですけど、そんな大変なことに?
そうよ。目標達成どころか、大目玉をくらうこと間違いなしよ。
ええっ? そうなんですか? どういうことか、教えてください!
じゃあ、まず「決算書」から説明するわね。正式には「財務諸表」といって、企業などの一定期間の経営成績や財務状態などを明らかにするために、取締役などによって作成される書類よ。会社法、金融商品取引法などで作成が義務づけられているの。
たとえばどんな書類ですか?
損益計算書・貸借対照表・株主資本等変動計算書・キャッシュ・フロー計算書などよ。株主に対して、出資した資金をどのように運用したかを報告するツールにもなるの。
まさに、企業の成績表ですね。
企業の成績表であるこれらの財務諸表の作成にあたって、故意に虚偽の内容にして、収支を偽装することを、粉飾決算というの。典型例としては、会社の経営成績を実際よりよく見せるために、損益計算書の数値を操作して、「売上などの収益を増やす方法」と、「仕入れなどの経費を減らす方法」などがあるけど、筋野さんがやろうとしていたのは前者ね。
そうか。ずるをして自分の目標を達成させようとしただけなんですけど、会社の決算報告にまで影響してしまうんですね。
そうよ。担当部署の人が、正しい決算書を作成しようとしても、元々の数字が違っていたら、意味がないでしょう?
確かにそうですね。
粉飾決算を行う企業は、民事上・刑事上の責任を問われたり、対外的な信用を失うペナルティが考えられるけど、「改善のための努力を怠ってしまう」ことも、大きなデメリットだと思うの。目標が達成できなかったら、これまでのやり方を変えたり、目標自体を見直したりするはずだし、周りからも変化を求められるはずよね。でも、ごまかして、数字だけをよくしてしまうと、問題に気づかれることなく、なんの努力もされないままで、どんどん悪化してしまう可能性もあるわ。
そうですよね…。
すみません! 目先の目標達成にだけ気をとられてしまっていました!
目先の目標も大事だけど、未来を見つめることも忘れないでね。
はい!
はい!!
◆会社の財政状況や経営成績を実際よりよく見せるために、正規の会計処理上のルールに従わず、賃借対照表や損益計算書の数値をごまかし、利益や損失を過大・過小に表示して決算を行うことを、粉飾決算という
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