第一法規株式会社|教育研修一覧

2015/07/14号

~不正のトライアングル~の巻

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筋野さんが、朝から暗い顔をしています。それに気づいたたなやんが、声をかけました。

はぁ~。

どうしたんですか? うかない顔ですね。

学生時代の友達から、「会社の先輩が在庫商品の横流しをしているみたい」って、相談受けちゃってさ…。「先輩だから注意もできないし」って、悩んでるんだよ。

えっ! それって、まずくないですか?

まずいわね!

えり先輩! どうしたらいいでしょう?

ここは遠慮してる場合じゃないわよ。金額が大きくならないうちに対応した方が、会社のためにも、その先輩のためにもなるわ。直接注意できないなら、上司に報告した方がいいわね。

それが、先輩が部門のリーダーで、仕事を一任されてるみたいで、管理職は全然タッチしていないらしいんです。

だから商品の横流しができてしまったのね。先輩は、お金に困っていたりしないかしら?

はい。ギャンブル好きで、いつもお金がないって言ってるみたいです。

「不正のトライアングル」がそろってしまったのね…。

不正のトライアングル?

「機会」「動機」「正当化」という3要素がそろうと、不正のリスクが高まるという理論よ。米国の犯罪学者、D.R.クレッシーが、犯罪者を調査して導き出した理論なの。

なんだか、難しそうですね。

わかりやすく説明するわね。まず、「機会」は、やろうと思えば不正行為ができてしまうような職場環境のことよ。その先輩のように、ひとりの人に業務の権限が集中しているような職場がこれに当てはまるわ。上司のチェックが形骸化しているような職場も危ないわね。

そういう職場、どこにでもありそうですけど。

だから、危ないのよ。それから「動機」は、不正行為を実行したいと思う、主観的な事情のことよ。例えば、「ギャンブルで多額の借金を抱えている」などがこれにあたるわ。

なるほど…。

それから、「正当化」は、不正行為をしてもいいと思う、主観的な事情のことよ。現金横領の際に、「盗むんじゃなくて、ちょっと借りるだけ」と、自分自身に言い訳するようなことね。

そうか。確かに、「機会」「動機」「正当化」の3つがそろうと、悪いことだとわかっていても、ついやってしまうかもしれませんね。

「動機」「正当化」については、行為者本人の事情によるところが大きいから、会社は、「機会」をできる限り少なくするようにする必要があるわね。

友達には、どうアドバイスしたらいいでしょう?

上司に相談できないのなら、内部通報制度を利用するよう勧めてみてはどうかしら。

そうか、その手がありましたね!

在庫商品の横流しは、在庫商品を会社に無断で売って、その代金を横領する不正の手口だけど、社内のシステムを熟知した管理者が不正を働いたり、監査などがあまり入らない職場で起こりやすいのよ。最近では、本社の管理が行き届きにくい、海外子会社などでリスクが高いと言われているわ。

確かに。長年、特定の人に業務が任されている状況だと、不正が行われていても、他の人は気づきにくいですよね。

とにかく、どんな理由があっても、不正行為はやっちゃだめよ。

はい!

わかりました!!

◆ ①機会、②動機、③正当化という、3要素がそろうと、不正のリスクは高まる

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