大手商社のホームページを見ていた足尾さん、記載されている「奴隷法」という言葉にぎょっとしています。
“Modern Slavery Act 2015”って、直訳すると「現代奴隷法」ってことですよね?
いきなりどうしたんですか、「奴隷法」なんて。どこの国の話ですか?
英国の法律みたいです。
そうなんですか。いまどき奴隷なんて、時代錯誤な気がしますけど。
実はそうでもないのよ。
現在でも、奴隷がいるってことですか?
奴隷状態に置かれた労働者、といったほうがわかりやすいわね。拘束労働、児童労働、強制労働、人身取引などの人権侵害行為をひっくるめて、“Modern Slavery”つまり「現代奴隷」と表現しているの。
法律で禁止しないといけないほど、大きな問題になっているんですか?
いい質問ね。世界には、多くの現代奴隷が存在しているの。実際に、欧米の大手スーパーマーケットの店頭で販売されていたエビが、実は人身取引業者にだまされた労働者が無報酬で過酷な労働条件で捕獲したものであったことが発覚して、消費者に衝撃を与えた事件もあったのよ。
ひどい…。でも、うちの会社に限ってはそんな悪質なことに関わっていないと思います。
そうとも言い切れないわ。国際労働機関(ILO)の2012年の調査結果によれば、現代奴隷は全世界で2,100万人にのぼるそうよ。日本の企業であっても、サプライチェーンのどこかで、知らず知らずのうちに現代の奴隷制度の存続に加担している可能性があるのよ。
知らなかった…。
だから英国の「現代奴隷法」は、自社のサプライチェーンにおいて、強制労働や人身取引などのない調達を行っているかどうかを調査し、毎年声明を公表することを義務付けているの。足尾さんが見ていたホームページの記載は、まさにその声明の文面ね。
ちなみに、英国国内のすべての企業が対象になるんですか?
英国でビジネスを行い、年間の売上高が3,600万ポンドを超える営利団体や企業が対象よ。
わかりました! 深刻な人権侵害は世界から撲滅されるべきですよね。
うちの会社も英国に支社がありますし、他人事じゃないですよね。これからは意識をあらためます!
ええっ、ほんとですか!?
大げさね。別にそこまで驚かなくても。
うちの会社には、英国支社があったんですね!
そっち!?
【現代奴隷法(Modern Slavery Act 2015)のポイント】
◆ 現代奴隷法は、2015年3月に成立した英国の法律である
◆ 対象は、英国においてビジネスを行い、年間売上高が3,600万ポンドを超える営利団体や企業である
◆ 法の対象となった営利団体や企業には、強制労働や人身取引といった人権侵害のないサプライチェーンからの調達を行っているかどうか調査し、それを声明として公表することが毎年義務付けられる
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