コンプライアンス推進室に配属された新入社員の指導係を担当しているみちが悩んでいるようです。
どうしたの? 何か悩みごと?
それが、私が指導している新人が、CSRは勉強したくないって言っていて。
コンプライアンス推進室は、勉強しなきゃいけないことがたくさんあるし、えりさんもいるから、大変だよね。
足尾さん、そんなこと言ったら…。
私のこと、呼んだ?
あっ、えりさん!!
えりさん。新人が、会社の利益に貢献しないことは勉強したくないって言ってるんです。どうすればいいでしょう?
その気持ち、ちょっと分かるかも。うちの会社でも、ボランティアなどに取り組んでるけど、その資金を事業に回したら、もっと売上を上げられるんじゃないかな、と思うことがあります。
足尾さん、分かっていないわね。CSRに取組むことは、株主や顧客、地域社会などのステークホルダーからの信頼を得ることにつながるのよ。それに、知名度の向上や、法令違反などによる経営危機の回避などにもつながるわ。
それは分かっているんですけど…。ただ、直接利益を生み出さない、会社の本来の業務と関係のない仕事をするのは、ちょっと抵抗があるんですよね。
あら、それは大きな誤解だわ。CSRはただのボランティア活動じゃないわよ。二人とも、ISO26000って聞いたことがあるわよね?
2010年11月にISOが発行した、組織の社会的責任に関する国際規格ですよね。
先進国から発展途上国までを含めた国際的な場で、複数のステークホルダーの議論を経て開発した国際規格で、ステークホルダーを重視して組織が効果的に社会的責任を果たすための手引ですよね。
さすが、みち。よく勉強しているわね。ISO26000は、説明責任や人権の尊重など、CSRを果たすための7つの原則を提示しているわ。
人権といえば、現代版奴隷制度の問題とか、現代の話とは思えない話を聞いたことあります。
うちの会社も、海外のサプライチェーンで児童労働などの問題が起きたら、国際的に批判されることになるわ。
海外事業では、土地の権利をめぐっての人権侵害も問題になることがあるから、他人ごとではないですよね。
そうか。CSRって、事業に密接に関係してくるんですね。
そうよ。ISO26000は、人権問題について、8つの課題を提示しているの。これには、苦情解決や、労働における基本的原則及び権利も含まれているわ。
CSRは、ぼくたちの仕事の土台となる基本的な部分を担っているんですね。
新人にも、きちんと説明します! えりさん、ありがとうございます!
よかったわ。それはそうと、足尾さん。さっき私がいるから、推進室は大変だって言ってなかった…?
え、えりさんの聞き間違いじゃないですか~(ピューと走り去る)。
まったく、いつも逃げ足が速いんだから(笑)。
【ISO26000 社会的責任を果たすための7つの原則】
(1) 説明責任:組織の活動によって外部に与える影響を説明する
(2) 透明性:組織の意思決定や活動の透明性を保つ
(3) 倫理的な行動:公平性や誠実であることなど倫理観に基づいて行動する
(4) ステークホルダーの利害の尊重:様々なステークホルダーへ配慮して対応する
(5) 法の支配の尊重:各国の法令を尊重し順守する
(6) 国際行動規範の尊重:法律だけでなく、国際的に通用している規範を尊重する
(7) 人権の尊重:重要かつ普遍的である人権を尊重する
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