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2017/04/11号

~職務発明、特許を受ける権利は誰にある?~の巻

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「特許で大金持ち!」なんて素敵な話ですが、会社員の場合はどうなるのでしょうか?

足尾さん、何かいいことあったんですか?

(図面を見せて)実は、すごくいい発明を思いついたんだよ! これで特許を取って、一攫千金だ!

これですか? なんだか、当社の新商品と似てますけど…。

新商品からヒントをもらったんだ。

これって、職務発明なんでしょうか?

名称はどうでもいいよ。僕は金持ちになるんだ~!

本当になれるかしら?

どういうことですか、えりさん?

足尾さんの「発明」もツッコミどころ満載なんだけど、まずは「職務発明」について説明するわね。

はい! お願いします。

「職務発明」とは、「会社に勤める従業員等が会社の仕事として研究・開発した結果、完成した発明」のことよ。このような発明は、従業員本人の努力はもちろんだけれど、会社も、給与・設備・研究費などを従業員に提供することにより、発明の完成に一定の貢献をしていると考えられているの。だから、原則として特許法では、従業員に特許を受ける権利があるとしつつも、会社の貢献度を考慮して、その特許発明を実施する権利(通常実施権)や予約承継の権利を認めているのよ。

えー、発明したのは僕なのに!?

そうなのよ。でね、この職務発明について、「会社が特許権を取得する場合に従業員が得られる対価等の取扱いについて定めた制度」を、「職務発明制度」というのよ。

会社が特許を取っても、従業員の利益は守られるんですね。

そうね。従来の制度では、特許を受ける権利は発明者(従業員)に帰属するから、会社が特許を出願する場合は、その権利を従業員から承継する必要があったの。でも、2016年4月施行の改正特許法によって、職務発明について、特許を受ける権利を会社が取得することを就業規則等で定めている場合は、権利が発生した時点から原始的に会社に帰属させることが可能となったのよ。

ええ!? そんなの嫌ですよ。

もちろん、この場合には、従業員等は、「相当の金銭その他の経済上の利益(相当の利益)」を受ける権利を有する、とされているわ。

ただであげなければならないと思って、びっくりしました~。

でも「相当の利益」っていわれても、あいまいですよね。

「相当の利益」としては、金銭以外にも、株式、給与のアップを伴う昇進・昇格、社費での留学などの交付・付与も認められているのよ。会社は、この「相当の利益」の内容や付与条件、「相当の利益」の内容を決定するための事項を、具体的に、ガイドラインに従って決めることとされているわ。

じゃあ、うちの会社の場合は、どのくらいもらえるのかな~(ウキウキ)♪

(困った顔で)でもね、足尾さん。その「発明」は特許を取れないと思うわ。特許法では、発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が公知・公用の発明に基づいて容易に発明をすることができたときには、その発明については特許を受けることができない、としているの。これを「進歩性の要件」というのだけど、うちの会社の新商品を少し変えた程度では、進歩性が認められるとはいえないわね。

えっ!?

百歩譲って、「実用新案」ってところかしら。知ってるとは思うけど、実用新案とはね…。

特許を取れないなんて~!

足尾さん? 聞いてる?

ウウウ、僕の夢が、金持ちになる夢が~(頭をかかえる)。

夢が破れたショックが大きすぎたようですね…。


【職務発明制度のポイント】
◆「特許を受ける権利」を会社が取得することを就業規則等で定めている場合は、権利は発生した時点から原始的に会社に帰属する
◆従業員等は、「相当の金銭その他の経済上の利益(相当の利益)」を受ける権利を持ち、この利益は、金銭のほか、株式、給与のアップを伴う昇進・昇格、社費での留学等、金銭以外のものを交付・付与することも認められている
◆特許を受ける権利は、会社が従業員等に対してあらかじめ職務発明規程等により帰属の意思表示をしなければ、従業員等に帰属する

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