会社の財産である「営業秘密」。簡単に漏えいさせないために、私たちに何ができるのでしょうか。
聞きましたか? 昨年末に退職した営業部の社員が、転職先に営業マニュアルを持ち出していたことが発覚したんですって。
聞いたよ!営業には大打撃だね。
営業マニュアルは、れっきとした「営業秘密」だから、持ち出した人はタダじゃ済まないわよ。
あ、えりさん!
営業秘密とは、企業の研究開発や、営業活動の過程で生み出された有用な情報かつ秘密として管理されている情報であって、公然と知られていないものをいうの。
例えば今回の営業マニュアルや、顧客名簿、新規事業計画、製造方法、設計図面等ですよね。
ええ。そうした営業秘密を、不正な手段により取得して使用したり、第三者に開示する行為等は、不正競争防止法の「営業秘密侵害罪」に問われるの。
営業秘密って、システムに侵入されて抜き取られるもの、みたいなイメージを持っていました。
そうでもないのよ。経済産業省の平成28年度の調査によれば、営業秘密の漏えいが発生したルートとしては、多い順に①現職従業員等のミス(43.8%)、②中途退職者(正規社員)(24.8%)、③取引先や共同研究先を経由(11.4%)等が挙げられているわ。
情報の電子化が進んで、簡単に大量の情報を取り扱うことができるようになったから、人を通じた営業秘密の漏えいが増加しているのかもしれませんね。
どうしたら、「人を介在した漏えい」を防止できるんでしょうか。
まず、従業員による漏えいへの対策としては、営業秘密へのシステム的・物理的なアクセス制限があるわ。「システム的な制御」としては、情報保存領域へのアクセス権の設定、ファイルのパスワード設定、アンチウイルスソフトの導入ね。「物理的な制御」としては、営業秘密の隔離保管・入室制限、破棄する際に復元が不可能な方法で実施するといったことかしら。
座席配置等の工夫、防犯カメラの設置、ログの記録等「漏えいが発覚しやすい環境づくり」、マル秘表示、無断持ち出し禁止表示等「秘密情報に対する認識向上」といった心理的な抑止も有効だと聞いたことがあります。
そうね。あと、忘れてはいけないのが取引先の人よ。取引先への漏えい対策としては、秘密保持契約の締結、契約書に情報漏えいに関する損害賠償等の条項を設ける等が考えられるわ。
なるほど~。確かに、一緒に仕事を進めていくうえで、大事な情報を共有していますからね。
でもまずは、従業員全員が、「身の回りの何が営業秘密に当たるのか」をしっかりと認識できていることが、営業秘密漏えい防止の第一歩よ。
そうですね。
ちなみに、営業秘密侵害罪に問われた場合、罰則は10年以下の懲役若しくは2千万円以下の罰金、あるいはその両方よ。
ひえー…。
それだけ企業に与えるダメージが深刻ってことですね。
僕はそのような悪事を働かないことを、改めて決意しました!
【営業秘密と漏えい】
◆企業の研究開発や、営業活動の過程で生み出された有用な情報かつ秘密として管理されている情報でかつ公然と知られていないものを「営業秘密」という
◆営業秘密の例としては、営業マニュアル、顧客名簿、新規事業計画、製造方法、設計図面等が挙げられる
◆営業秘密を、不正な手段により取得して使用したり、第三者に開示する行為等は、不正競争防止法の「営業秘密侵害罪」に問われる
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