新しい会社との取引は、秘密保持契約書の締結や社内手続きなど、業務内容の説明以外にも、色々と手間のかかるもの。できれば、ずっと同じ会社と取引したい、なんて考えたことはありませんか?
うちの大ヒット商品Zの新色を出すことになったんですけど、上司から「製造委託は今のA社と別で、他にも2社に見積りを依頼するように」って言われたんです。
「相見積もり」をするんだね。
はい。でもA社は、うちの会社と付き合いが長くて、業務について詳しいですし、取引先が変わると色々面倒だから、A社に委託したいんです…。もう、受注のポイントをA社に教えたいくらいです。
ちょっと、それは聞き捨てならないわ!
あっ、ヨーコさん。
まず、なぜ「相見積もり」をするのか、理由は分かっているわよね?
少しでも安く作れるように、価格の比較をするためですよね。
そうね。でも、原価削減のためだけじゃないわ。今と別の会社にお願いすることで、商品の品質向上や、製造工程の改善、製造期間の短縮などに結びつくことがあるの。その上で価格自体も安くなることがあるのよ。
価格が安くて、品質も上がる?
例えば、新しい会社が、強度や耐久性などを保ったまま、A社より少ない材料で商品Zを製造できる技術を持っていた場合、材料費が抑えられたり、商品の軽量化につながったりすることも期待できるわ。
商品Zの材料費は高騰しているみたいなので、新しい材料を提案してもらえたら助かります。
「相見積もり」をとるときに、各社に代替材料があるか聞いてみるのもいいんじゃない?
そうね。ぜひ変更する場合は「持続可能な社会」の実現に向けて、環境負荷の少ない材料や製造工程を選ぶようにしてほしいわ。
価格が抑えられて、環境負荷の少ないものにできたら、商品の価値も上がるね!
その通りよ。「相見積もり」は商品や取引条件などの改善の機会でもあるの。それに、適切な「相見積もり」をせずに、特定の会社への依存度が高くなった場合、取引先側に有利な取引条件でしか供給されなくなるなどのリスクがあるわ。
あっ! そういえば昨年、A社から商品Zの材料費が上がったとの申し出があって、言い値のままで値上げに応じてしまいました。
在庫切れさせちゃダメだから、言い値でも仕方ないよね。
そんなことがあったのね。それと、もし倒産などでA社へ委託できなくなってしまった場合、商品Zを製造できなくなるリスクもあるの。でも、「相見積もり」を行っていれば、代替先候補も見つけやすくなるわ。「相見積もり」は商品を安定供給するためにも大切なことなのよ。
でも、取引先が変わると…。
そんなにA社に委託したいの? もし受注のポイントを教えるなど、A社だけを優遇するような行為をしたら、A社以外が不利になって、業者間の競争環境が害されてしまうわ。それに、A社の担当者とマユユが「私的な利益の授受」等の癒着を疑われるおそれもあるわよ。
癒着なんてしていないです(汗)。
それならいいけど。うちの要望を各会社へ、公平・公正に伝えるためにも、見積り仕様書をしっかり作成してね。
はい。わかりました。…ああ…A社が季節ごとにみんなに配ってくれる「お菓子」、毎回楽しみなのになあ。
えっ、マユユそれでA社推し? こら~。
見積り仕様書、つくってきまーす(ダッシュで逃げ去る)。
あれ? もう見えなくなってる…。
【「相見積もり」を行うポイント】
◆新たに取引を開始する時だけではなく、継続商品に関する取引の契約を更新する時などにも、「相見積もり」は定期的に行う
◆「相見積もり」は、価格の比較に加えて、商品の品質向上や、製造工程の改善、製造期間の短縮など、商品や取引条件などの改善の機会と考える
◆「相見積もり」を行う際は、見積り仕様書を作成し、各社に公平・公正に要望を伝える必要がある
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