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第32回 旭化成株式会社(2)

前回に引き続き、旭化成株式会社におじゃましています。今回も育児中の社員の方を支援するための取り組みをはじめ、長時間労働対策や次世代育成支援対策推進法(以下、次世代法)第二期行動計画など、同社の特色ある取り組みをお聞きします。

(インタビュアー:大麦)

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2007年3月に、「上司と部下のための出産・育児専用サイト」を設置されたそうですが、これはどのような目的で設置されたのでしょうか。

田中氏  制度設計者、運営者の視点ではなく、利用者の視点から、母性保護や両立支援に関するさまざまな制度施策、働き方を考えていただくために設置しました。そして、制度の有効かつ円滑な運用のためには、利用する本人だけでなく、その上司にも制度を理解してもらうこと、その上で、お互いにコミュニケーションをとることが大切であると考えて、コミュニケーションツールとして利用してもらいたいと考えています。

サイトにはどのような内容が盛り込まれていますか。

田中氏  上司向けには、母性保護・両立支援制度を時系列的に整理し、スケジュール、手続、日常の配慮までを上司の視点からまとめています。一方、本人向けには、制度理解のみならず、どのような働き方をしたいのか、そのために自分が考えたり実行したりすることが何か、また、いかに上司や同僚の理解を求めていくか、という視点も踏まえてまとめています。これらは、「妊娠がわかったとき」「復職前」などのステージ別に上司・本人のそれぞれが配慮・確認すべき内容をまとめた本編とコミュニケーションシート、休業中の収入と支出について給与明細を見ながらシミュレーションできるシートの形で掲載しています。

サイトのコンテンツや運営のなかで工夫している点をお聞かせください。

田中氏  上司向けも本人向けも、社員であれば誰でも見ることができるようにしているので、たとえば制度一覧表ですと、出産予定日を入力すれば、具体的にいつからいつまでその制度を利用できるのか瞬時に表示されるなど、出産当事者でない上司でも使いやすいよう工夫しています。また、育児休業中の収入と支出をシミュレーションできるシート等を利用して、休業中、復職後の生活を具体的にイメージしていただけるように工夫しています。さらに、制度施策以外でも、社外のサイトとのリンクも充実させ、出産・育児に関する情報を網羅的にとれるようにしています。

上司と部下のための出産・育児専用サイト
上司と部下のための出産・育児専用サイト

そのほかに、仕事と育児の両立支援のために力を入れて取り組んでいる制度がありましたらお聞かせください。

田中氏  ベビーシッター補助制度があります。理由を問わず、利用されたベビーシッター料金の領収書を事務局に送ると、利用料金の半額が補助されます。1回補助の上限は7,500円、年100回の回数制限がありますが、申請は上司経由ではなく、自由に、必要に応じて申請していただく制度としており、リピーターの多い制度です。

長時間労働対策としては、どのような取り組みをしていますか。

田中氏  計画年休の取得促進と、長時間労働者の削減を行っています。職場風土醸成の観点から、全員向けの施策として「アニバーサリー休暇」などの施策を実施したり、ワーク・ライフ・バランスのポスターを掲示したりするなど、全社への呼びかけを行う一方、個人別の現状を確認した上で、個々人の状況について必要に応じて労使で協議をしながら改善策を講じています。総論にならないよう、現場の一人ひとりの状況に目を向け、それぞれが抱える固有の状況を見ながら、個々にあった改善策を検討しています。

従業員向けの労働時間の適正化に関する冊子
従業員向けの労働時間の適正化に関する冊子

そのほかに、長時間労働対策として取り組んでいることがありましたらお聞かせください。

田中氏  時間外の多い社員の産業医面談が確実に行われるよう人事も入ってサポートをしています。

次世代法の第二期行動計画(期間:07年4月1日~10年3月31日までの3年間)では、どのようなことに特に力を入れていますか。

田中氏  特に制度改定の目標は掲げていません。一人ひとりの意識変革を促すための施策に重点を置いた行動計画としています。具体的には、「ニュー・ファミリー・フォーラム」と銘打った講演会の開催、WEB上での「応援エッセイ」、相談窓口の充実などを準備しています。

そのほかに、第二期行動計画で力を入れて取り組んでいることがあればお聞かせください。

田中氏  男性の育児休業取得率のさらなる促進や、従業員のお子さんにオフィスをみていただく「オープン・オフィス・デー」の開催など、第一期でスタートをした試みを、着実に継続していくことが、第二期行動計画の一番大事な基礎になるものと考えています。そのときだけの施策にならないよう、どんな状況下でも継続・定着していく施策に育てていくことに力を注いでいます。

最後に、ワーク・ライフ・バランスについて、今後の方向性をお聞かせください。

田中氏  社員一人ひとりがいきいきと働くということは、会社にとっての宝です。いきいき働くためには、自分を休ませる時間も、磨く時間も必要です。また子育て中など、仕事を続けるために何らかの手助けが必要なこともあります。そういった観点から、会社が社員に提供できることは何か、考えていきたいと思います。

本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

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*この記事は2008年11月に取材したものです

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