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倫理・リスク管理部の牛尾幸宏氏と前野一氏

第65回 カルビー株式会社(2)

第65回も、引き続きカルビー株式会社におじゃましています。従業員一人ひとりが、自立的にコンプライアンスに対応できるように、さまざまな支援をしていらっしゃいます。倫理・リスク管理部の牛尾幸宏氏と前野一氏にお話をうかがいました。
インタビュー時期:2010年12月

(インタビュアー:よっしー)

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組織としてのコンプライアンス対応をはじめられた当初は、関係法令のチェックも大変だったそうですね。

牛尾氏  非常に苦労しましたが、いろいろと手探りで調べながら、現在の法令遵守総点検の仕組みを整えてきた経験は、我々が「法に守られている」という意識を、組織全体で共有できるようになったという意味で、とても意義深いと感じています。我々は法令を遵守することで、会社として個人として、法令に守られています。法令遵守総点検をとおし、「ひとつの事業をするためには、さまざまな法令が関係しており、それらを遵守することなしに、創造的で自由な事業はできない」ということを、みんなで意識することができます。

倫理・リスク管理部の牛尾幸宏氏と前野一氏

法は我々が守るべきものであると同時に、我々は法に守られているということですね。弊社がさまざまな企業の皆様のコンプライアンス活動をお手伝いさせていただくなかでも、「コンプライアンス活動はやらされるものではない。自発的に対応することが、自分たち自身を守ることにつながる」ということを、お伝えしたいと思っています。

牛尾氏  現在では、毎年、法令遵守総点検を行い、各主管本部が法令改正の動向を追い、動向に応じて準備をしたり、変更を指導したりしています。しかし10年ほど前は、必ずしもすべての法令をきちんと守れているとは言えず、現場ごとにさまざまな課題を抱えていました。

具体的には、どのような課題があったのですか。

牛尾氏  そうですね。例えば、ある届出について、責任者の転任によって、変更届を提出しなければならないにもかかわらず、工場長や管理責任者が認識をしていなかったり、業務の主担当者の転勤で、その業務がうまく引き継がれていなかったりといった、大きな問題こそ引き起こしてなかったけれども重要な課題がたくさんありました。また、同じ法令でも、該当する事業所の規模の大小や地方自治体によって、対応すべき内容はまったく変わってきますので、それらに対応する難しさもありました。

牛尾氏

御社のように、組織が大きく、また日本全国にさまざまな事業所や工場を有していらっしゃると、法令対応もなかなか一筋縄ではいかないのではないかと思います。

牛尾氏  さらに、海外のことも考えますと、日本の法令よりも外国の法令のほうが厳しいというような状況も多々あります。世界全体の方向性を見極め、日本の法令以上の対応を行うというのも、その時点ではコストがかかるかもしれませんが、ひとつの選択肢です。それが利益との相反となってしまうといった過剰対応も問題がありますから、難しい判断をせまられますが、企業の将来を考えたときに、事後対応ではなく事前対応をするという判断も、時に求められます。

日々のコンプライアンス活動のなかでは、「マネジャーズ・ガイドライン」を活用されているとうかがいましたが、どのようなガイドラインですか。

牛尾氏  社内的なルールや規程を、日常業務のなかで実践する際のガイドラインです。社内的なルールや規程の数は、膨大です。それらをすべて覚えている人なんていませんから、それらのルールや規程を、行動規範・行動指針に沿って実務レベルにしたときに、どういった仕事につながっているのかを確認できるものです。

前野氏  いわば、管理者として最低限、これだけは知っていて欲しいというルールブックですね。各種規程等にはすべて主管部署がありますから、マネジャーズ・ガイドラインを確認し、不明点は主管部署に問い合わせていただくようお願いしています。

前野氏

牛尾氏  マネジャーズ・ガイドラインをしっかりと活用してもらって、年に1回は自己点検を行い、自分の足らないところや知らなくてやっていないことを、セルフチェックしています。それが、業務プロセスのチェックにもつながっていきます。

最後になりますが、今後の課題としては、どのようなことをお考えでいらっしゃいますか。

牛尾氏  課題は、本当にたくさんありますね。たとえば、教育研修ひとつをとってみても、各地域のコンプライアンス推進担当者より、主体的に管理職対象の研修を実施していただいています。弊部のメンバーが少ないため、多数の事業所に対して、十分にきめ細やかなケアができておらず、まだまだ課題があります。また、以前より、従業員向けのコンプライアンスハンドブック等も作成していますが、残念ながら改訂の対応が追いついていないのが現状です。

コンプライアンスガイドブック

前野氏  2009年度は、一人あたり年間で6時間という具体的な目標を設定し、教育研修によるコンプライアンスの浸透・徹底を図りました。3ヶ月に1度のコンプライアンス推進担当者の会議等では、各事業所で実施している活動を互いに発表し合い、お互いにヒントを得たり、必要に応じて横展開を実施したり、さまざまな工夫がなされていたかと思います。創意工夫というのは、大切です。

牛尾氏  従業員のみなさんそれぞれに、自立的に対応していただくための支援を、事務局として続けていきたいと思っています。全従業員に対するコンプライアンス意識調査の結果等も参考にしながら、具体的な教材を提供したり、対応のヒントをお伝えしたりといった取り組みが、今後も継続的に必要です。

本日はどうもありがとうございました。

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*この記事は2010年12月に取材したものです

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