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総務部の齋藤雄二氏と古藤田弘氏

第48回 エバラ食品工業株式会社(2)

第48回も、引き続きエバラ食品工業株式会社におじゃましています。お話をうかがったのは、総務部の齋藤雄二氏と古藤田弘氏。厳しい競争のなかで、企業が生き残っていくことと、コンプライアンスは不可分です。だからこそ、「自分で考える」ことを大切に、地道なコンプライアンス勉強会等を続けていらっしゃいます。

(インタビュアー:よっしー)

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コンプライアンスの勉強会をすすめるにあたって、方針などはありますか。

齋藤氏 勉強会は、基本的に「結論ありき、答えありきではない」と考えています。一人よりも二人、二人よりも三人、いろいろな意見や見方があります。さまざまな答えのどれもが正しいわけですが、そのなかで「こういう考え方もある」、「ああいう考え方もある」、「当社にとって一番いいのはどういう考え方だろう」といったことを導き出すことが、コンプライアンス活動であり、コンプライアンス勉強会であると位置づけています。

齋藤氏

現場でのコンプライアンス活動は、コンプライアンス・オフィサーの方が中心となって進めていらっしゃるそうですね。

齋藤氏 はい。現場での活動は、各事業所の所属長でもあるコンプライアンス・オフィサーが、中心となってすすめています。オフィサーの方たちも、各事業所のコンプライアンス活動を進めるにあたって、自分たちはどうしたらいいのか、だれもが同じ疑問を抱えています。そのような共通の課題を解決する場として、年1~2回のコンプライアンス・オフィサーの方を対象とした勉強会の場を活用しています。

古藤田氏 どういう切り口で進めれば、現場でコンプライアンスを推進できるのか。オフィサーの方には、オフィサー対象の勉強会の場で外部講師等から得たヒントをもとに、実際に自分の現場で、実践してもらっています。

勉強会で得た内容を、オフィサーの方が現場に持ち帰るわけですね。

齋藤氏 当社が、「風通しのよい職場づくり」を目指すなかで、「普段、気がついているけれども、なかなか言えないこと」を、コンプライアンスの一つひとつの題材を通したなかで、引き出していければと考えています。ですから、オフィサーの方には、現場における勉強会でも、なるべく一方通行の講義形式ではなく、受講者間でいろいろな意見を出し合えるようなスタイルで進めてもらうようにお願いしています。現場でも、コンプライアンス勉強会を通じて、いかに社内の風通しをよくするかが課題ですね。

研修において、意見を出し合うって、とても大切なことだと思います。

齋藤氏 現場では、それぞれさまざまな工夫をしているみたいです。現場の勉強会において、取り扱う題材についても事業所単位、部署単位で、そのときコンプライアンス関連で話題になっているテーマを取り上げたり、御社から購入した映像教材を利用したりと、さまざまです。このほか、テキストの配布や、eラーニング、意識調査の実施を、グループ会社を含めた全社員を対象に行っています。

コンプライアンスブック

いま具体的に課題とされているテーマなどはありますか。

古藤田氏 グレーゾーンをどのようにみんなで話し合って解決していくか、というのはひとつテーマかと思います。コンプライアンスは、ともすると「○○をしてはいけない」「××もダメです」といった議論になってしまいがちです。しかし言うまでもなく、大切なのは制限することではなくて、みんなで「考える」ことだと思っています。

古藤田氏

齋藤氏 年代によって、コンプライアンス意識に若干違いがあるのは感じています。というのも、実は以前、判断を事務局に求めてくるようなケースも多々ありました。つまり、「○か、×か」の答えを求めてくるわけですね。人間って、「○か、×か」が好きなんです。きっと、ラクをしたいからでしょう。「YESか、NOか」というのは、「考えることをしなくていい」という意味で、とてもラクですからね。そういう意味では、ベテラン世代が、比較的「ダメなものはダメ、良いものは良いとはっきり言ってくれ」と要求しがちであるのに対して、若い世代は、活発に意見をかわして考えること、つまり、自分たちで考えて、方向付けをするということが得意ですね。

おっしゃるとおり、「自分で考える」というのはとても大切なことだと思います。

齋藤氏 正直、「口うるさく言われるからやる」というような、「やらされ感」から抜けきれていない面がまだあります。それをどのように、気持ちを切り替えていくか。
コンプライアンスをやって「営業もしやすくなる」「利益になる」というところがわかってくると、受身ではなく、非常に積極的になっていきます。ですから、「あなた自身は、これに関してどう思いますか」と投げかけて、考えてもらう。そこを根気強く続けていくことなのではないでしょうか。会社から強制的にやらされているのではなくて、一人からグループ、グループから事業所と広がっていくようなかたちになっていくのが、ベストではないかと思います。

今後に向けて、目指している方向性などはありますか。

齋藤氏 まず、我々事務局側の自己満足に陥らないようにしなければいけません。たとえば、「定期的に研修をやった」、「定期的に案内を出した」といったような、年間スケジュールにのっとって、それらをうまくこなして満足感を得るようなレベルであってはいけません。役員も含めた社員たちにとって、コンプライアンスがいい意味で、真に職場に取り入れられ、うまく活性化されていく方向性を見出していきたいと思っています。

コンプライアンスがもっともっと、現場で取り入れられていくように、ということですね。

齋藤氏 コンプライアンスは「熱意」しかないと思っています。コンプライアンス・オフィサーの方たちに、本当の意味で理解を深めていただいて、「コンプライアンス活動は必要だ」と思っていただければ、自然と熱がはいります。企業も人も、過ちというのは、必ず繰り返し起こすものです。それをいかに事前に食い止めるか。あるいは過ちが起きてしまったときに、的確に迅速に対応できるか。コンプライアンス活動は、そのための活動でもありますから。ですから、企業が存続する限りやり続けなければならない。それがコンプライアンス活動です。

そうですね。コンプライアンス活動がなくなることはないですからね。

齋藤氏 企業というのは、今後、淘汰されていくのだと思います。淘汰されたときに生き残る企業、生き残れる企業って、コンプライアンスやCSR。最後はそこになるのではないでしょうか。遅すぎることはないと思いますので、力を入れていきたいですね。

企業が、「商品やサービスが良い」というだけで生き残れるということは、おそらくないのでしょうね。

齋藤氏 最後はコンプライアンスやCSRにきちんと取り組んでいる企業が生き残っていくのではないでしょうか。我々としては、最大限努力し、やるしかないのかなと思っています。せっかく企業に勤めている以上は、企業として未来永劫、生き続けてほしいわけです。そのために、今、何をすべきなのか。当然、商品をつくることも重要ですけれども、企業として何をすべきなのか。社員は襟を正しているか。そういったすべてが整えば、企業が社会から排除されることはないのだろうと思います。そういう企業であり続けたいですね。

本当にそのとおりですね。今日はどうもありがとうございました。

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*この記事は2009年10月に取材したものです

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