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人事教育部ビジネス教育担当部長の宮田正樹氏と、経理部内部統制推進グループマネージャー中西英雄氏

第40回 株式会社日本製鋼所(2)

第40回も引き続き日本製鋼所におじゃましています。今後、不況のなかで従業員のモラルダウンが発生してしまうことに危機感を抱く宮田氏。そして、世代交代に対する危機感を原体験に、内部統制の推進に真摯に取り組む中西氏。おふたりの熱い想いに、強く心をうたれました。

(インタビュアー:よっしー)

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内部統制への対応は、どこの企業でも担当の方は本当に苦労されているようなのですが、いかがですか?

宮田氏  私は、内部統制の必要性が叫ばれはじめたときに、「これはチャンスだ!」と感じたんですよ。金融商品取引法への対応に代表される内部統制への取組みが、現場の修復運動になればよいなと思ったからです。日本の会社の現場、そのなかでもとくにメーカーの管理部門の現場は、いわゆる失われた10年などを経て、人を減らし、ガタガタになってしまっています。少数精鋭で、個人のスキルをもってなんとか綱渡りをしてきたような状態です。内部統制への取組みをよいきっかけとして、今一度、業務フローを見直し、人が足りていないところには人を補充し、必要があればシステムも投入することで、そんな状態を少しでも変えていく。「現場がよりよい方向へ向かっていく」という方向へなればいいなと思っていたのですが、なかなか理想を実現するのは難しいですね。

宮田氏

中西氏  実際、私もこれまでの業務経験のなかで、「以前であれば組織として当たり前にできていたことが、どんどんできなくなっていく」状況を、痛感したことがあります。不況や世代交代の流れのなかで、かつて大勢いた「なんでも知っているベテラン社員」が、現場からどんどんいなくなっていく状況を、目の当たりにしました。そのような状況のなか、私自身も、「意識をもってやっているだれかがいるうちはいいけれど、そうでないと、組織としてのレベルがどんどん落ちていってしまうのではないか」という危機感を強くもつようになりまして。

御社では、内部統制を「コンプライアンスの一層の徹底」「業務の有効性と効率性の更なる向上」に役立つものと認識されていますよね。具体的には、どのように内部統制を推進されてきましたか?

中西氏  内部統制の推進にあたっては、当初は純粋に会社法対応として、業務リスク全般の把握から取組みがスタートしたという経緯があります。その後、会社法対応の一部として、財務報告リスクにフォーカスする形で、金商法にも対応する必要性がでてきまして、事務局の性格も、会社法対応から金商法対応へと移っていきました。

それでは、まず会社法への対応にあたっては、いかがでしたか?

中西氏  会社法への対応において、我々は「先々の金商法対応で使えるもので、かつ業務のためにもなるもの」を意識してつくっていこうと努めました。そこまで対応することが必須ではないとは承知していたのですが、せっかくの機会ですので、非常に広い範囲で業務フローを作成するなどしました。たとえば、財務報告リスクには関連しなくても、帳票ベースで、だれがどこでどんな仕事をしているのか、もう一度おさらいしようという意味で、他の部署の方にも対応してもらいましたね。

中西氏

実際にそれらに対応した、従業員の方々からは、どういった反応がありましたか?

中西氏  比較的年配の方は、総じて「そういえば昔そういうのを作ったこともあったけれど、しばらく作ってなかったな。やはりそういうのも必要だから、いい機会だ」という認識をしてくれましたね。それ以外の世代の方ですと、「面倒くさいな」という反応が一般的でしたでしょうか(笑)。意識の違いはあったと感じています。

金商法対応ということになりますと、かなり経理・財務的にコアな内容にも踏み込んでいく必要があるかと思いますが…。

中西氏  会社法対応からはなれて、金商法対応になっていけばいくほど、中身が少し本質を離れていってしまった時期もありました。幅広く対応しようとしたがゆえに、評価のための作業が進むにつれ、現場に「やらされ感」「やりたくない」「いやだな」という雰囲気が、でてきてしまったんです。それは我々が最も恐れていた事態でしたが、そうなってしまうと、はじめの協力者ほど、逆に強い反対勢力になってしまいます。その部分が、非常に恐れたといいますか、意を砕いた部分ではあります。結局、迷惑をかけてしまった部分もあったかと思います。

内部統制推進グループは、御社のなかでは「一時的な組織」との位置づけであるそうですね。

中西氏  本来、内部統制とは、それぞれの組織がPDCAをまわしていくものです。私たち内部統制推進グループの位置づけは、いわばその本来の姿ができるまでの、触媒的・活性剤的な存在として、期間限定の組織としてたちあがりました。

内部統制推進グループのメンバーは、現在何名いらっしゃるのですか?

中西氏  計4名の体制です。内部統制は、対応すべき範囲がとても広いこともあって、メンバーのなかに、経験豊富で有能なシニア世代がいてくれることで、本当に助けられています。ほんの一例ですが、たとえば、私のような若輩者が、立場上、子会社の社長さんに対して、言いにくいことを言わなければならなかったりするんですね。そんな時、その社長さんとも同世代で、顔なじみでもあるようなシニア世代のメンバーが、年の功ですごくサポートしてくださいます。

宮田氏  自分もそうですけれど、「アラウンド還暦(60歳前後の人たち)」はね、今まで自分に蓄積した経験と知識を、なんとか役立てたい、後人に伝えたいと思っているんですよ。

さまざまな世代のメンバーがいることで、とてもいいチームワークができあがっていらっしゃるのですね。最後に、今後の課題としては、どのようなことを考えていらっしゃいますか?

宮田氏  いままで、内部統制推進グループを中心に、業務フローをつくったり、リスクの所在を洗い出したりしてきましたが、本当に大きな成果がでていると思います。だからこそ、本当にこれからが大切です。いかにこれから本当に現場でPDCAとして回していく運動にもっていけるか。ここからがスタートです。

中西氏  経営者に対して、そして従業員に対して、本質的な目的論をふまえたうえで、今後なにをしていくのか。課題もたくさんあり、ハードルの高さも感じていますが、模索していきたいと思っています。

宮田氏  本当にこれからが重要です。とくに不況の時代には、企業も業績至上主義にならざるをえません。コストもいろいろな面で下げざるをえなくなるでしょう。そうなると、従業員のモラルダウンが起こります。環境としては、これからどんどん、コンプライアンス違反や不祥事が発生しやすくなるわけですね。ですから、広い意味でのコンプライアンス意識をさらに徹底していかないと、不幸な従業員が増えていってしまいます。経営陣にも今まで以上に本気になってもらう必要があるし、現場の「やらされ感」をどう払拭していくかということも、ますます大きな課題となってくると思いますね。

ありがとうございました。

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*この記事は2009年5月に取材したものです

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