(インタビュアー:よっしー)
◆ CSR活動
CSR活動として、赤ちゃん誕生記念育樹を20年以上も続けているのですね。取組みのきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
有川氏 私どもの提供している商品の多くは、お子様の成長に伴って卒業され使われなくなっていきます。2歳になるぐらいまでの期間はとても密にお付き合いいただけるのですが、その後はほとんど接点がなくなってしまいます。そのため、少しでも長くお付き合いいただく何かがないか、ということを考えていました。その中で、お子様の育っていく未来の環境に緑を残していく取組みに目をむけ、赤ちゃんを育てること(育児)と木を育てること(育樹)がどちらも周囲の人たちの温かい愛情に守られて成人(成木)になっていく、相い通じるものである、ということで“育児と育樹、心は同じ”をスローガンとしてこの「赤ちゃん誕生記念育樹キャンペーン」を始めました。
どのような体制で取り組まれているのですか?
有川氏 このキャンペーンはIR・広報室が担当しています。毎年1回、その前年に生まれた赤ちゃんを対象に応募していただき、抽選で5000名の当選者の人数分の苗木を植樹する取組みです。1987年に1回目の植樹を行ってから今までに約9万人の赤ちゃんに参加いただいています。参加費は無料で、成木になるまでの維持管理費等は全て私どもが負担しています。当選の方にはオリジナルの木製手紙を「美和の森から届く木のおたより」としてお届けしています。
現在の植樹場所は茨城県常陸大宮市にある「ピジョン美和の森」と名付けた場所で、この森の中にナラ・クヌギ・エノキなどを植樹し、豊かな森づくりを目指しています。それぞれの苗木に名前をつけてはいませんが、皆さまの植樹地として成長を見守っていきます。また、毎年5月には植樹式を行い、ご自分で植樹を希望なさるご家族を招待しています。ほぼ一日がかりのイベントとなりますので、事前準備も含め、当日は、全社の協力を仰いでいます。毎年20名程度の様々な部署の社員が集まって運営しています。23回目となる今年の募集要項は次のとおりです。
http://www.pigeon.co.jp/csr/ikuju/sanka.html
植樹により、またその地域とのつながりも生まれているとお聞きしました。
有川氏 苗木や山という自然が相手となりますので、頭を悩ますことは多いです。また、植樹式当日も赤ちゃんや上のお子さまを連れたご家族にお集まりいただきますので、安全に過ごしていただけることを第一に考えています。ただ、当日お越しいただいた方がとても嬉しそうに、楽しみながら植樹なさっている様子をみると、心の底から「よかったなぁ」と苦労や疲れもなくなる気がします。参加してくださった皆さまに支えられていると本当に感じます。また、今年23回をむかえますが、成人の記念や高校卒業の記念に植樹地を訪れたい、というようなお問合せも入るようになり、お付き合いが続いていることを感じる機会も増え、嬉しい限りです。
CSRとは、どのようなこととお考えですか?
有川氏 現在の私どものCSR活動の中心はこの育樹キャンペーンですが、私どもは、企業理念が「愛」であり、社是として「愛をうむは愛のみ」と掲げております。そして、妊娠、出産、子育て、加齢、介護を通して手助けを必要とする全ての方へ「愛」を具体的な商品やソフトサービスに形で提供することを柱に事業展開をしています。そのため、事業活動を通してのCSRの実現が可能ではないかとも思っています。生活支援企業として少しでも皆さまのお役にたちたいと考えています。
◆ 社員のために
2006年に男性社員の育児休業促進制度を新設されたそうですね。創設のきっかけは何ですか?
有川氏 もともとは当時の社長の「女性の育休は多いのに何故男性はとらないのだ?」という声がきっかけだったと聞いています。私どもの育児関連制度は1984年が始まりです。当時、出産しても働き続けたい女性のために、制度が発足されました。その後も改正を重ねながら、育児休業法制定以前の1991年には、1年間の育児休業と短縮勤務制度が導入されていました。
制度の概要をお聞かせいただけますか?
有川氏 休業の制度としてまず2パターンあります。ひとつは1ヶ月の有給で休業する「ひとつきいっしょコース」、もうひとつは最長1年6ヶ月まで無給で休業する「おおきくなるまでいっしょコース」です。こちらは両方取得することも可能です。また、小学校1年終了まで短縮勤務ができる制度もあります。
こういった内容以外にも有給で出産立会い休暇、出産応援休暇、看護休暇、学校行事参加休暇などの休暇制度もあります。
1ヶ月の有給、というところが思い切っていて、魅力的ですね。
有川氏 そうですね、有給ですと男性社員で配偶者が専業主婦の場合でも、生活を気にすることなく休業ができます。男性の取得を促すための策であったと思います。
利用する側として、気になる評価の面は、どのように対応されているのですか?
有川氏 私どもでは、「目標管理制度」を導入し、期ごとに組織目標や個人目標の設定をしているのですが、この目標の中に、「育児レポートの作成」を盛り込むことが必須となっています。このレポートは1歳6ヶ月までの子どもがいる社員全員に義務付けられています。レポートを作成しないと目標達成しないため、必然的に取り組むことになります。
社内での反響はどうですか?
有川氏 この制度が導入されて3年になりますが、男性社員の育休取得者は増えています。合計で14名が取得しています。社内のイントラネットの掲示板で育児レポートを公開していたり、社内報等で紹介したりといった取組みもしていますので、「次は自分がとろう」と思っているかもしれません。また、子どもが生まれたときに会社に提出する届用紙の中に、「いつ育休をとるか」という項目が入っていたり、また、あわせて、人事から所属長へ制度内容についての連絡をしていますので、このような取組みが、取得促進に繋がっているのではないかと思います。
◆ その他
海外でも高品質ブランドとして高い支持を受けていますね。
有川氏 ありがとうございます。日本国内で50年以上赤ちゃんの研究を続け、子育てに伴うお困りごとを解消するための商品を展開しています。赤ちゃんの成長メカニズムは全世界共通ですので、子育てに伴うお困りごとも似ています。日本の消費者の皆さまは厳しい目をお持ちですから、日本の消費者の皆さまに支持いただいた商品は、海外の方からも支持いただける商品になっています。
商品に関連して、赤ちゃんの哺乳相談が持ちかけられることがあるとお聞きしました。
有川氏 私どもは哺乳びんの販売から始まっている会社ですので、赤ちゃん研究の中でも哺乳研究に関してはかなり深い内容を研究しており、ご病気があったり、低体重で生まれて飲む力の弱い赤ちゃんのために工夫した哺乳びん・乳首も扱っています。そのため、海外の方から「日本のピジョンになら対応できる商品があると聞いた」とご連絡をいただくこともあり、提供させていただいております。
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*この記事は2009年1月に取材したものです
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