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昭和シェル石油、法務室主査の杉本善彦氏

第26回 昭和シェル石油株式会社(2)

前回は、『行動指針(コンプライアンスブック)』の策定の経緯や込められている思いについて御聞きました。今回は具体的な取組みについて聞いていきます。

(インタビュアー:たなやん)

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『行動指針(コンプライアンスブック)』を読んでもらうための工夫はされているのでしょうか。

杉本氏  まずは冊子を開いてもらうきっかけを作るために、WEBラーニングを活用しました。

福井氏  コンプライアンスは今一種の流行り言葉ですが、ネガティブなイメージとくっついている部分があります。昭和シェル石油でいうコンプライアンスは会社の都合の締め付けとかではなく、社会の要請に応えること、またそうしたことを実践していくことが、自分の身を守ることになり、さらには会社の持続的発展につながっていくということを伝えるのが目的でした。WEBラーニング自体、15分程度で答えられる、シンプルなものにしました。

受講率はどのくらいでしたか?

福井氏  各部門長に受講率を公表する等、イベントのような形で行ったところ、受講率がほぼ100%を達成しました。イベントのような形で行ったという趣旨は、まさにコンプライアンスは会社のためにというスタンスではなく、自分自身のためになるという本質を理解してもらうための工夫です。

杉本氏  誠実・公正に行動する、社内規則を理解・遵守する、つまりは今やっていることをちゃんと今までどおりやればいい、そのことに気付いてもらうということです。「行動原則」の実践とは、業務を行うときに気付いてもらう、意識してもらう、身にしみて感じてもらうことだと思っています。何か問題に気付いたら誰かに(まわりの管理職や同僚に)相談し、疑問点や質問があれば問い合わせ部署に確認してください。職場で解決できないときは社員相談窓口を利用してください、ということをきちんと伝えたいと思っています。

福井氏  WEBラーニングのアンケートをとったところ、受講者の97%がコンプライアンスの理解に役に立ったと答え、同じく90%が今後もこういったコンプライアンスに関連するWEBラーニングをやってほしい、という意見でした。フリーアンサーも社員が積極的に取り組むためにはこうすれば、といった前向きな意見が多かったです。次回以降については、もう少し専門的な知識レベルのやや高いものもいくつか入れて行いたいと思っています。

杉本氏  コンプライアンスを組織のすみずみにまで浸透させていくのには時間がかかるとよく言われますが、トップの本気度は伝わっていると思います。

どのような効果を期待していますか?

福井氏  職場内で、普通に会話していれば防げるようなコンプライアンスリスクについて、それはまずいよ、と言えるような雰囲気を作れればと思っています。一番リスクを知っているのは現場なのです。形式だけできていてもどうにもならないので。各職場でコンプライアンス推進活動を進められるためのツールを用意していく。それが使命だと思っています。

今後の「行動原則」の浸透活動について、どのような展開を考えておられますか。

杉本氏  「行動原則」の研修は今まで、新入社員、新任管理職研修等の階層別研修のなかで、講義を中心に行っていました。いくつかの事例を取り上げて、Q&A形式やケーススタディーも交えてはいましたが、ほとんどが概念の説明でした。

福井氏  これからは、認識や知識を行動に結びつけていくことが大切です。今回の一連の活動で当社がコンプライアンスを最優先にしているとの意識はしてもらえたのではないでしょうか。トップのコミットメントを定期的に発信したり、教育活動を推進していく。形はよくできていたとしても、社員一人ひとりの意識が維持・向上し、「行動原則」の実践につながっていかなければ意味がありません。

最後に昭和シェル石油のコンプライアンス推進活動の課題と目標を教えていただけますか。

杉本氏  昭和シェル石油のコンプライアンスの取組みは確実に進んでいると思います。「行動原則」の制定、『行動指針(コンプライアンスブック)』の発刊、コンプライアンス研修やWEBラーニングの実施といった基準・体制の整備は着実に行われています。今後は企業風土としてのコンプライアンス意識の醸成を図るべく継続的に意識付けを実行していきたいと思っています。社員一人ひとりが疑問点や質問があればそのまま放置せずに、まずは職場の中で共有し一緒に考えるということが浸透していることが最も大切なのではないでしょうか。そのことを強調するために、今回発刊した『行動指針(コンプライアンスブック)』の冒頭にもトップマネジメントの決意、本気度を示しました。

福井氏  トップのメッセージにもありますが、究極のゴールは社員全員が当社の社会的責任を認識し、自然と周りの人たちとお互いに助け合い、意見や知恵を出し合って行動できる職場、の実現ではないでしょうか。コンプライアンスの本質は決して「締め付け」や「ルール遵守」ではなく、より敏感に社会の要請に応えていける企業となり、企業価値を維持・向上させていく活動なのではないだろうかと思っています。

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*この記事は2008年9月に取材したものです

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