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todanabar
コンプライアンス統括室、小門口部長

第24回 株式会社損害保険ジャパン(2)

前回に引き続き、株式会社損害保険ジャパンにおじゃましています。今回も同社社員の6割を占めるという女性の活躍推進に関する取り組みを中心に、性別ではなく個々人の多様性を尊重する「ダイバーシティ」への取り組みについてもお聞きします。同社ならではの特色ある取り組みをたっぷりお聞きしたいと思います。

(インタビュアー:大麦)

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女性の活躍推進に取り組んだ背景にはどのようなことがあるのでしょうか。

石井氏  当社では、他社におけるいわゆる一般職を『業務職』と呼び、会社における重要な役割を担っています。女性がほとんどを占める業務職とパート・アルバイトを合わせると、女性が全体の6割を占めているという人数的な面と、それらの職制が非常に重要な仕事を担っているという内容的な面の2つの面があります。

人事部女性いきいき推進グループ主任 石井朝子氏
人事部女性いきいき推進グループ主任 石井朝子氏

07年に業務職のキャリアモデルとして業務リーダー(課長)が創設されました。これにはどのような目的があるのでしょうか。

石井氏  会社としては業務職の女性たちに、総合職への転換によって更に活躍してもらいたいという思いはあります。しかし、本人たちはそれよりも、新しい今までのキャリアを生かした形でステップアップをし、よりやりがいのある仕事をすることに魅力を感じていることから、この役職を創設しました。また、総合職だと役職がだんだん上がっていくイメージがあると思いますが、業務職だとある程度の年次までいくとその先は一定となり、その後のキャリアの先が見えないという不安を社員たちは抱いていました。

瀬尾氏  業務職でキャリアを積み上げてきた社員にとっては、最終的に希望するポジションは総合職ではなく、業務職の中でのマネジメントであったり、より専門的な仕事なのだと思います。また、これまで業務職の人事評価をするのは総合職の課長だったのですが、実際に仕事内容を見てもらっている業務職のリーダーに評価をしてもらうことで納得感があるという声も出ています。

人事部女性いきいき推進グループ業務リーダー 瀬尾真紀氏
人事部女性いきいき推進グループ業務リーダー 瀬尾真紀氏

女性総合職の活躍支援としては、どのような取り組みをされているのですか。

石井氏  当社は男女雇用機会均等法の施行以降に採用をスタートしたことから、女性総合職の歴史がまだ浅く、採用人数も少なかったため若手の女性総合職に対してのロールモデルがなかなかいないというのが現状です。若いうちは基本的に男性総合職とそれほど変わらないのですが、出産や育児のことを考えたときには男性総合職をモデルに将来像を描くことは難しいです。そうした点でロールモデルは重要であり、現在、女性総合職専用のSNSの開設を検討しています。自発的なメンター探しができる環境を整えていきたいと考えており、近いうちに実現する予定です。また、ロールモデルをつくっていく対策として現在は課長代理層の女性を対象にした『Next Leadership Program 研修』を行っています。

『Next Leadership Program 研修』の効果はどのようなところに表れていますか?

石井氏  まさに意識改革の部分です。女性総合職であっても課長代理であっても、必ずしも自分がリーダーになりたくてがんばってきた人ばかりではありません。実際にリーダーとして活躍している5、6年先輩の話や、リーダーの魅力を女性のリーダーの口から聞くことによって、自分も目指してみようという気持ちがわいてきたという声が寄せられています。この研修の中では自分の中に新たなリーダー像を得られ、そこを目指すモチベーションにつながっているように思います。

社員の意識改革を進めるためには、どのような活動をされているのですか。

瀬尾氏  三社合併の直前の02年5月に、首都圏の中で属性にとらわれないさまざまなメンバーが集まって『首都圏ウィメンズコミッティ』が発足しました。そこでは、「女性が能力を発揮し働きやすい会社を目指す」ことを目標に、フラットに意見を出してもらい検討を重ねて生かすという、企画・運営を目標にしてきました。任期は1年ですが、継続するメンバーもいますので新旧混在により新しい視点を取り入れながら活動を行ってきました。

『首都圏ウィメンズコミッティ』ではどのような活動をされたのですか。

瀬尾氏  制度の改革はもちろん、女性同士のネットワークの構築、社外の女性管理職を招いてセミナーを開催するなどして意識改革の部分を一気に盛り上げました。そうした、さまざまな活動を続けていくうちに、『首都圏ウィメンズコミッティ』の知名度は少しずつ上がりましたが、一方で「ウィメンズ」と付いていることで男性が入りにくい、また自分には関係ないと思ってしまうような雰囲気もありました。男性にとってもWLBは大切ですし、男性の視点も生かしたい、男性も巻き込んでいきたいとの思いと、ダイバーシティの概念からの女性活躍を取り入れたいことから、07年、『ダイバーシティコミッティ』に名称新たにスタートしました。運営方法はウィメンズコミッティと変わりませんが、名前を変えることで「女性活躍推進」の考え方から一歩進んだ「ダイバーシティ」の考え方で、多様性を認めて一人ひとりの能力を発揮するためにはどうしたらよいかを再度見直すことができました。

『ダイバーシティコミッティ』に改名後はどのような活動に力を入れているのですか。

瀬尾氏  『首都圏ウィメンズコミッティ』のときに発足した活動として、『マザーズ・ランチ・ミーティング』がありました。これは、産休・育休中の社員も含め、ママたちがお昼休みに集まって情報交換をするというネットワーク支援です。そういった身近な活動から徐々に男女を対象としたものに拡大し、ファミリーディ実施の提案というところまでになりました。昨年、初めて『ファミリーウィーク(職場参観)』を1週間開催しましたが、これは『ダイバーシティコミッティ』の主催によるものです。女性だけの活動から徐々に男女ともにという活動になってきました。

『ファミリーウィーク』とはどのようなものですか。

石井氏  メインは職場訪問です。単に職場を訪ねるだけではなく、受け入れる職場で、それぞれのダイバーシティコミッティメンバーが自主的に、何らかの迎える態勢を作ってくれるよう運営をお願いしました。例えば宝探しのような趣向で職員のスタンプラリーをして最後にたどり着いた先でパソコンを開くとそのお子さん宛てのメールが届いているといった仕掛けをした部署もあったようです。その他には、本社2階にある体育館ほどの大きな会議室を使って「損保ジャパンをご家族の方に知ってもらおう」というコンセプトのもとに各部署が「自分たちは日ごろどんな仕事をしているのか」を展示するブースを出展しました。また、社内衛星放送の見学ツアーをしたり、本社内の社員食堂で日ごろお父さんお母さんが食べているものと同じものを味わってもらったり、お子様向けのメニューを用意したりもしました。

評判はいかがでしたか。

石井氏  大好評で、アンケートの結果はほぼ100%が楽しかったという回答でした。また、開催する前と後ではだいぶ社員の受けとめ方の印象が違っていて、開催前は必要性の論議などもありましたが、日ごろ支えてもらっているご家族に会社を見てもらうという効果はもちろん、それ以上に、職場内でのコミュニケーションにおいてはより顕著な効果が表れたように思います。日ごろは互いに仕事をしているときの顔しか知らないわけですが、父としての顔や夫としての顔、母としての顔や妻としての顔など、日ごろは見られない顔が見られ、一人ひとりのバックグラウンドや多様性を認め合う文化の醸成に一役買ったように思います。『ファミリーウィーク』は今年も開催する予定です。

瀬尾氏  「今年もやりますよね?」といった問い合わせもあり、社員の側からの期待を感じます。

『ダイバーシティコミッティ』の活動には会社はどのように関わっているのですか。

瀬尾氏  まだ『首都圏ウィメンズコミッティ』といっていたころに、「このような活動を全国に広げたい」「全国の全部支店から選任してほしい」との要望があり、全国の全部支店から男女1人ずつ選任し、『全国ウィメンズコミッティ』が03年に発足しました。全国で約400人の活動メンバーがセミナー開催やニュース発行、メルマガ配信などの独自の企画で、その地域や部門、状況にあった活動を展開しました。人事部でサポートをしながら活動しているのですが、基本的には自主活動で、本人たちも楽しみながら取り組んでいました。その組織を08年度からは『首都圏ウィメンズコミッティ』の発展形となる『ダイバーシティコミッティ』と『全国ウィメンズコミッティ』を『ダイバーシティコミッティ』という名称に一本化し、人事部と連携して活動を行なっています。

『ダイバーシティコミッティ』はどのような活動をされているのですか。

瀬尾氏  全国での活動はさまざまですが、社外講師を呼んで自己啓発やストレスケアの話をしていただいたり、業務リーダーなど社内でいきいきと活躍している人を他の地区から呼んで話をしてもらったりしています。セミナーの際は部店長などからトップメッセージをいただき、活動のバックアップもいただいています。また、制度についての勉強会をしてその内容を職場のみんなに伝えていくなど、意識改革につながる活動を行っています。おそらく人事部が「こういう活動をしてください」と指示しても「やらされ感」があって真に根付いた活動とならないのではないかと思いますが、その点では社員からのボトムアップになっていると思います。

最後に、今後の課題についてお聞かせください。

瀬尾氏  WLB支援制度も整ってきて利用者数も増えている今、制度を利用する側と受け入れる職場側両方の意識改革が今後の課題です。そのためには社員一人ひとりがダイバーシティを理解すること、WLBの意識付けを行うことが必要だと思っています。実際に職場ごとの運営がうまくいくように活用事例の紹介にもこれまで以上に取り組んでいきたいと思っています。

石井氏  「女性いきいき」に端を発してはいますが、最終的には、男女の性別を超えて社員一人ひとりの価値観を受け入れ、働き続けられる企業を目指しています。

本日はお忙しい中、ありがとうございました。

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*この記事は2008年7月に取材したものです

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