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総務部長の美濃口真琴氏と CSR 推進部長の椎名康雄氏

第34回 株式会社東京証券取引所グループ(2)

第34回も株式会社東京証券所グループへ。
今回は、同社ならではのCSRに対する取組みをお伺いしました。金融リテラシーの向上や、金融経済教育など、独特な試みについてご紹介いたします。

(インタビュアー:たなやん)

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御社のCSR体制について教えてください。

椎名氏  当社は、金融インフラとして社会貢献活動を推進するという観点から、1年半前にCSR推進部を設置しました。

御社にとってCSRとはどのようなものですか。

椎名氏  当社の企業理念において「私達は、投資者をはじめ市場利用者の視点に立って、高い信頼性と利便性を備えた健全な市場の構築を目指し、豊かな社会の実現に貢献します。」とうたっています。高い信頼性と利便性を備えた健全な市場の構築こそが、市場開設者としてCSRの原点と考えています。
そのうえで、豊かな社会の実現に貢献できるよう、金融リテラシーの向上などに取り組んでいます。

金融リテラシーの向上とはどのような取り組みですか。

椎名氏  私たちは、市場開設者の立場を活かして、東証アカデミーによる社会人への証券知識の普及や次世代を担う学生への金融経済教育を行っています。

なぜそうした活動を展開するようになったのですか。

椎名氏  社会が持続可能で豊かな発展を遂げるためには、健全な経済のもと証券市場の裾野が拡大することが必要です。資産運用における「貯蓄から投資へ」の流れ、経済のグローバル化、高齢化社会の到来、社会保障や金融制度の見直しなど、暮らしと密接なところで大きく変化する現代社会においては、一人ひとりが主体となり自立した生活者として、自らの資産を管理・運用することが求められます。そのためには各々の生活者が、金融経済に関する知識を身につけることが必要であり、それを支援するという観点から、当社は公正・中立な金融インフラの立場で、金融経済教育活動に取り組んできました。

東証アカデミーの具体的な活動を教えてください。

椎名氏  東証アカデミーは2004年4月に開校し、社会人向け講座や、学生・教員向けプログラムを展開しています。
社会人向け講座は、入門コース、基礎コース、選択コースなど受講者ニーズに応じた講座を開設しており、年間100回以上開催し、のべ約8,000人の方に受講いただいています。
学生向けプログラムとしては、当社の講師が学校に出向き行う授業が年間150回以上、当社に来訪する学生を受け入れ行う授業などが年間300回以上あり、のべ約20,000人の方に受講いただいています。また教員向けにも各種セミナーやワークショップを開催し、のべ約700人の参加をいただいています。

学生にはどのような授業をされるのですか。

椎名氏  小学生から大学生までそれぞれのレベルに応じた授業を行っています。たとえば中学生について言えば、国・企業・家計といった経済の三主体の関係、株式会社の目的と役割、会社の事業資金の調達方法、間接金融と直接金融の仕組みと働き、株式会社や株主からみた株式の利点、株主のリスクなどを、講義とロールプレイングを通じて学んでもらっています。基礎知識の習得とともに、経済や金融、企業活動を身近なものとして理解してもらうことに努め、学生の「生きる力」を育むという視点で授業を行っています。

金融経済教育のほかに、どのようなCSR活動に取り組んでいますか。

椎名氏  既に多くの企業が実施していますが、当社としてもCO2削減に取り組んでいます。当社は、証券界の電力削減目標に準じて、電力使用量を2012年までに2002年度比で12%削減することを目標として設定し、節電に取り組んでいます。社員に対しては「電力使用量の削減のための社員行動指針」を定めるなどして、昼休みの室内照明の消灯や個人用パソコンの節電、近接階への階段を利用した移動など、日常できる節電から実施しており、着実に削減効果が現れてきています。
CO2削減は単なるスローガンではなく義務と捉える時代になっています。この自然環境を未来の子供たちからの預かり物と考えれば、それを毀損することのないよう必要な対策を講じ次世代に引き継いでいかなければならないと思います。

御社は植樹活動もされていると聞きますがどのようなものですか。

椎名氏  秋田県の鳥海山の山麓に2004年6月「東証上場の森」を創設しました。1本1本の木を育て森に成長させるという植樹活動は、上場会社1社1社の投資魅力の向上に適切な役割を果たし市場全体の質を向上させるという市場開設者の活動と、理念的に共通するとの考えから、植樹活動を始めたものです。この活動は、社員が東京を離れ自然豊かな秋田における植樹を通じて環境保全に対する意識を高める機会としても活用しています。鳥海山の雄大な自然のもとではまだまだ小さな森ですが、大きな木となり葉を繁らせCO2削減に役立つよう成長を期待しています。

いろいろな取り組みをされていますね。

椎名氏  このほかにも産学連携・学術支援活動として大学に寄付講座を提供したり、国際的な技術支援活動としては新興国市場の証券取引所職員を対象とした研修なども実施しています。さらに文化活動としては東証に由来する歴史的文献・遺物など貴重な史料を一般公開するほか、年末には当社館内でコンサートや絵画展なども開催しています。
  こうしたCSR活動をステークホルダーの方々にお伝えするため、昨年12月「CSR・環境レポート」を発行しました。ホームページにも掲載していますのでご覧いただければと思います。
http://www.tse.or.jp/about/kensyo/csr/report.html

最後に今後のCSRの課題について教えてください。

椎名氏  証券取引所の活動そのものがCSR活動であり、課題は高い信頼性と利便性を備えた健全な市場の構築に尽きます。そのうえで金融経済教育をはじめとするCSR活動をさらに拡大・充実させていくことかと思います。

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*この記事は2009年1月に取材したものです

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