第一法規株式会社|教育研修一覧

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第38回 TOTO株式会社(2)

前回に引き続きTOTO株式会社をお訪ねしました。
今回は、コンプライアンスを定着させるための取り組みについてお伺いしました。

(インタビュアー:大麦)

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コンプライアンスの研修にあたり苦労されたことはありませんか?

時枝氏  導入当初は、「コンプライアンスとは何か。」という基礎から入りましたし、教材もある程度揃っていましたが、全社員を対象にした研修では4~5年以上経過しますと「教材を何にするか」ということで苦労しましたね。製造、研究開発、販売、アフターサービスなど部門が抱える課題が異なっていますので、部門で身近に感じる教材があればという要望もありました。そこで出会ったのが御社の「ミニドラマで学ぶ会社員のためのコンプライアンス」です。

社員の皆さんの評価はいかがでしたか?

時枝氏  概ね好評でしたね。これまでと違った形でのそれぞれの部門で題材を選択して対話型の研修スタイルで行いましたので、新鮮だったのではないかと感じています。アンケートも実施しましたが、「自部門で起り得る事例を選択できるのも良かった。」「具体的な事例だったので、的を射た話し合いができたと思う。」などの感想をいただきました。

今後、どのような研修をお考えですか?

時枝氏  多くの皆さんは、コンプライアンスの事務局から案内が出されるものが研修と考えがちです。実際は、この他にもグループ内で発生した事例を定期的に発信したり、皆さんに注意していただかなければならない項目も全社通達で発信していますので、研修の一部として捉えていただきたいと感じています。
基本的には、ミニドラマやEラーニング研修を中心に継続していくことになると思いますが、それぞれの部門で自主的に取り組んでいけるような仕組みができればと考えています。

具体的な方策はありますか?

時枝氏  コンプライアンスは、あたり前のことをあたり前に行うことと言われていますが、グループ内でも同じような不祥事が再発してしまいます。一人ひとりがいかに意識していただくことが重要であるかということです。これまでの研修で使用してきた事例または社外での事例などの材料はこれまでの研修等で個人のポケットに入っていますので、そのポケットの中をいかに有効に使っていただく方策が必要になってきます。年1回の研修では、一時的には意識があがっても継続性がありません。年間1時間の集合研修よりも日々または週1回のわずかな時間で繰り返し意識付けを行う方がより効果的ではないかと感じています。

海外グループ会社での研修はどのように取り組まれていますか?

時枝氏  海外グループ会社については、CSRの定着に向け企業理念や海外で共有するコンプライアンスの基本項目を設定し、英語、中国語、台湾語の教育資料を作成しました。国際事業部と海外事業所が連携して取り組んでいますが、各国の文化、宗教、事業の歴史などが異なることから、国内と同じ取り組みを推進することには無理がありますので、各国の実情に応じたプログラムを作成いただいてマネージャークラスを中心に推進しています。中国にあるグループ会社では、全社員を対象としてコンプライアンス意識の徹底を図る講習と企業文化の教育を行っています。また、「社内報」を発行して各職場の目立つところに張り出してCSRの周知・徹底を図っています。

法務部コンプライアンス推進グループリーダー時枝氏

海外事業所では各国の実情に併せた研修を行われているようですが、工夫した点、苦労した点などあれば教えて下さい。

時枝氏  国内では各グループ会社を含めて社内の事例をまとめてEラーニング等の資料を作成していましたので、海外でも各国の事例を探して整理しようとしましたが、残念ながら発生した事例がなく作成できませんでした。

国内研修の前と後ではどのような点が変わりましたか?

時枝氏  毎年実施しています社員意識調査の結果でも、社員のコンプライアンス意識は高まってきています。また、細かな内容も含めてスピーク・アップ(社内通報)の件数も増加していますので、そのことも変化が表れている点であると思います。

社員や管理職、経営層の方々の反応はどうですか?

時枝氏  組織的には、各事業所ごとの委員会を設置して部門長が委員長をしています。スピーク・アップ(社内通報)案件については、通報された部門の責任者に連絡して真摯に対応していただいていますし、その内容は毎月経営トップに報告して指示を受けています。個人のコンプライアンス意識の浸透度については、高い順に管理職→社員→グループ会社社員→契約・派遣社員等となっており、意識調査の結果も含めて上位者の方が高い関心を持たれています。

社員意識調査は毎年行っているようですが、翌年度の計画を立てる上でどのように活用されていますか?

時枝氏  意識調査は、当初「CSR&コンプライアンス意識調査」として実施し意識の浸透度等について確認してきましたが、要因を細部にわたって分析するまでには至りませんでした。スピーク・アップ等の内容を分析して、その背景にはコミュニケーション不足、会社への信頼、上司との関係などコンプライアンスの取組みに影響していることが考えられました。当社では、この意識調査とは別に社員意識調査も実施していましたので、2007年度から2つの意識調査を「TOTOグループ社員意識調査」に統一して取り組み、結果については部門ごとにフィードバックしています。全社的には、前年度との比較をする中で課題を整理し、チェック&アクション(CA)ができるようにしています。また、それぞれの部門も同様にフィードバック内容を基に自部門の課題をCAし、次年度の計画を立案していただいています。このように社員意識調査結果を活用してPDCAサイクルをまわすことによって、コンプライアンスの取組みが定着していくように推進しています。

コンプライアンスを推進する中で今後の課題をどのように捉えていますか?

時枝氏  基本はコンプライアンス違反を発生させないことになりますので、未然防止にどのように努めていくかということです。組織的な対応と個人への対応に分けられると思います。組織的にはガバナンス体制を確立することや法改正情報を素早くキャッチすることで対応できますが、問題は個人の意識です。一人ひとりのものさしが異なりますので、これくらいなら大丈夫だろうという意識が不祥事を誘発することになります。継続して一人ひとりのリスクに対する感度を高めていくようにしていきたいと考えています。

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*この記事は2009年4月に取材したものです

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