(インタビュアー:足尾)
◆2 コンプライアンス教育の取り組みについて
コンプライアンスの社内教育体制について教えてください。
湯川氏 新入社員研修を始めとしたあらゆる本社集合研修の場を通じて社員の理解を深めています。その他、テーマを与えた部署内研修会などを実施していますが、いまだ、全社員にコンプライアンスに関心を持たせるまでには到達していません。毎日の朝礼で継続的に教材などを読ませることで、いずれ全社員の意識が向上するものと確信しています。
コンプライアンス教育を行ううえで作成したツール、教材等について教えてください
湯川氏 「トラスコ善択ブック」VOLⅡ コンプライアンス事例集「クイズで学ぶコンプライアンス」作成経緯を記しておきます。社員からもっと具体的な事例集的なものが欲しいとの声が上がり模索していたところ、第一法規の「クイズで学ぶコンプライアンス」に出会いました。これを当社独自の「事例集」にカスタマイズすれば社員が関心を深めてくれる教材になると確信し、第一法規のご協力を仰ぎVOLⅡとして発刊しました。“企業人として最低これだけは知っておく必要がある”というコンプライアンス基礎知識を、楽しみながら学んでいます。120項目のテーマは、朝礼で読んでも6ヶ月程度かかる適度な教材となっています。また、社内資格制度(オレンジ博士)のテスト問題に出題され社員の関心は高まっています。この冊子は、当社のステークホルダーにも配布しています。機械工具業界のコンプライアンス意識向上に役立てれば幸いに思います。
具体的にはどのような教育、研修等をおこなっていますか?
湯川氏 現場のコンプライアンスを担うコンプライアンス・オフィサーの研修会を全国17ヶ所で定期的に開催しています。トラスコ善択ブック勉強会、コンプライアンス事例の討論会、グループ・ワークなどで身近な問題をテーマにしています。また、コンプライアンス室長の全国行脚を実施して、個人面談によりコンプライアンス教育とホットラインの活性化の重要性を説いています。社員(パートを含む)約1千7百人の面談を3年間コツコツ実施しています。大変な手間ですが、社員の意識改革には欠かせません。部署内研修では、就業規則上の「服務の心得・懲罰」をテーマとして6項目の事例を用い実施しました。身近なテーマで大変な反響を呼び、研修後は質問攻めに遭うなど、皆の関心の高さに驚かされるとともにうれしく思いました。また、「社員が1日1回コンプライアンスに触れる」をテーマにした『トラスコ善択ブックVOLⅠ・Ⅱ』を朝礼時に読み合わせることで、社員同士自分の行動に対して改めて確認する絶好の機会となっています。
成果はどうですか?
湯川氏 今まで“OK”だったことが“なぜダメなの”まさに心機一変です。社員の意識改革がそんな簡単にできるとは思っていません。ただ、コンプライアンスに関する意識調査を実施してみました。自己満足かも分かりませんが、営業現場の社員の意識は少しずつ高くなっていると思っています。
今後考えていらっしゃることはありますか(社内体制の整備、教育ツール等)?
湯川氏 “身だしなみ規程”の必要性を感じています。制服廃止等の影響か、最近は企業の枠を飛び越え個人の感性が優先した傾向にとどまるところが見えません。企業で働くものにとっての“身だしなみ”の基準を確立したいと考えます。「隣のコンプライアンス推進室」読者の皆さまにぜひ教えを講いたいと思います。
最後に、コンプライアンスの担い手は誰だと考えていらっしゃいますか?
湯川氏 「コンプライアンスは企業の問題で我々には関係ない」と他人事に考えている社員がいれば間違いです。企業そのものは意志を持ちません。企業を組成するのは社員です。社員の集合体が企業です。したがって、コンプライアンスの担い手は企業ではなく、社員一人ひとりと考えています。「このコンプライアンス違反は会社が犯したことで我々には関係ない」と思っている社員がいたとしたら、いつまでたっても企業のコンプライアンス・リスクは解消されません。
*この記事は2008年5月に取材したものです
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