コンプライアンス教育では、従業員一人ひとりがリスクを正しく識別し、適切な対応をとることができる、正しく考えられるように育成することが大切だということが、今回お伝えしたいことでした。
立場によってリスクは変わる
コンプライアンス教育で大切なことは、「立場によってリスクは変わる」ということを認識してもらうことです。同じテーマであっても、リスクのとらえ方やリスク対応の範囲は変わります。一般の従業員は、担当業務の目標達成が与えられた職務ですから、その遂行上で障害になることがリスクになりますが、たとえば課長の場合は、業務全体の改善と効率化の視点が求められるのが一般的です。さらに部長であれは、担当事業の中長期の成長を見据えた視点、役員であれば、継続的成長を遂げるための経営戦略という視点でリスクをとらえる必要があります。それぞれに与えられた権限を適切に行使し、目標を達成することが職責を果たすということだと思います。
また、先ほど、リスクは「損失や事故の大きさとそれを生じさせる確率」と説明しましたが、コンプライアンス教育では、リスクには損失や事故というマイナスの影響ばかりではなく、プラスの影響(これを「機会」といいます)もあることを強調して、社員の意識を前向き思考にすることが大切です。つまり、マイナスの影響にうまく対処できれば機会(強み)になると教えるのです。
リスクが起こりうる環境に突発的な事件や事故が発生すると、リスクが顕在化します。環境が変えられないとしたら、事故が起きないようにどうすればよいかを考えることが、リスク対応の本質だと考えています。